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田中靖浩(公認会計士):ここまで、イタリアからオランダということでヨーロッパの国々を巡ってきましたけど、今回はイギリスです。

白井咲貴(日経ビジネス):ついにイギリスですね。

田中:イギリスは会計の歴史を考える上ですごく重要な国です。産業革命という転換点は、経済産業史を考える上でもとても重要な分岐点で、会計に関しても、大きな転機になりました。

 この点については、後ほどある絵画と共に説明するとして……。白井さんが企業の取材に行く際、取材の前に決算情報って調べますよね。

白井:はい。

田中:赤字か黒字かなどの決算内容は、事前調査で調べますよね。また、決算時期になると、さまざまな企業について「赤字だった」「黒字だった」といったニュースがたくさん報道されます。

 黒字というのは、財産が増え、成長していることですが、赤字というのは食いつぶしが起こっていることです。では、赤字なのに何で会社ってつぶれないのか。それは過去に蓄積した蓄えがあるからなんですね。個人の家計もそうですが、蓄えがあれば少々の赤字は耐えられる。

 もう1つ理由があります。これは個人の家計では起きませんが、会社の場合は赤字であっても、それが財産なり現金の減少を必ずしも意味しないということがあり得るんです。

 利益がプラスであれば黒字、利益がマイナスであれば赤字ですが、利益の増減が財産の増減と一致しないということです。この点については、漠然とでも理解していますか。

白井:そうですね。何か大きいものを買ったとき、その費用を一度に決算書に計上するのではなくて、何年かに分けて計上する。そうすると、出ていったお金と決算書に載っている数字との間にずれが出るのかなと思います。

田中:そうそう。それが今回お話ししようとしている減価償却です。多額の⽀出を伴って何か買ったときに、全額を費用計上するのではなく、少しずつ分割した⾦額を費⽤計上するのが減価償却です。そうすると、支出と費用にずれが生じるのです。

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