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 事の次第は不明ですが、ミラノで2人が出会う。どうやらこの2人はものすごく仲がよく、意気投合したようです。レオナルド・ダ・ヴィンチは学校にきちんと通っていない無学の人でしたが、ルカ先生から平方根など数学の基礎を徹底的に学んだようです。

 その結果できたのが「最後の晩餐(ばんさん)」という絵なんです。これはミラノの大きな教会の食堂の絵です。

 ところが遅々として制作は進まず、担当から「あいつ、壁をじっと見ているだけで、何も描いていませんよ」みたいな感じで怒られたようです。でも、本人は本人なりに新しいことを試したようで、絵の具から遠近法、そして、スフマートというぼかしの技術といった、その時代になかった新しい手法がふんだんに採り入れられているんです。

 レオナルド・ダ・ヴィンチがなぜこういう新手法を採り入れられたのか。間違いなくルカ・パチョーリから教わっているんです。

簿記を解説した部分を勉強し決算に目覚めた商人

白井:数学のルカ先生からですか……。

田中:2人は直接会っていて、ダ・ヴィンチは個人授業を受けているんです。その後、ミラノにフランス軍が押し寄せてきて逃げるんですけど、この2人は一緒に逃げ延びています。いろいろな土地を転々としながら、最終的に2人でフィレンツェに戻ったようですね。

白井:そうなんですね。

田中:だから、非常に仲はよかったということだったと思うんですけど、ダ・ヴィンチが数学的素養をマスターできたのはルカ先生のおかげです。ダ・ヴィンチも恩義を返そうとしたんでしょうか。ルカ・パチョーリがその後に書いた本に対して、挿絵を数点プレゼントしています。ダ・ヴィンチが他人のために挿絵をプレゼントしたことはないので、よほどその先生に感謝したのでしょう。

白井:深いつながりだったわけですね。

田中:深いつながりですね。非常に2人は良好な関係を保ったようです。

 イタリアのルネサンス後期にルカ・パチョーリが『スンマ』という本の中で27ページにわたり簿記を解説したことによって、イタリアの商売人たちが熱心にそれを勉強した。具体的に言うと、「決算ということをやらなきゃいけないんだ」って目覚めるわけです。