田中:そのためのソリューションをビジネスとして提供したのがバンコでした。バンコの各拠点をつなぎ、為替手形を使ったキャッシュレスによる決済サービスを提供したのです。

 遠隔地だと、場合によっては通貨が違います。そこで、両替サービスも行いました。A支店でA通貨で預け、B支店でB通貨で引き出せる。当然ですが、この時にバンコは手数料を取る。この手数料ビジネスがバンコのスタートでした。

 当時のイタリアは、都市国家の集まりです。各都市に支店を置いたバンコ=銀行が始まった。後発組で世界的に有名になったのが、フィレンツェのメディチバンク(メディチ銀行)です。

 こうなると、当然ですが一つひとつの支店で帳簿をきちんとつくるだけではなく、全体を統括する帳簿システムが必要になってきます。A支店で為替手形を振り出し、B支店で引き出したことを照らし合わせるシステムです。

 銀行の支店全部が共通の帳簿記入システムをつくり、1カ月に1回など、帳簿を“ぶつける”ことによって取引が完結したことをチェックする。当時のメディチ銀行では、各支店の支店長は大量の帳簿を持って、本店のコジモ・デ・メディチを訪ねていたそうです。

 このようにして簿記は始まりました。個人がそれぞれ帳簿を付け始め、そのテクニックが遠隔地ネットワークでも使えるような形で進化を遂げた。「トビアスと天使」の絵から、こうした簿記のいわれが連想できると思います。

帳簿をつくった紙の誕生

 もう1つ、この時代に歴史的に非常に大きな変革が起こりました。数百年に一度の変革と言ってもいい大変革です。その変革とは、帳簿にも大きく関係するのですが、紙の誕生です。

 紙は帳簿をつくっただけでなく、聖書をつくりました。そして、紙があったからこそ、レオナルド・ダ・ヴィンチはたくさんのデッサンを残したと言っても差し支えないでしょう。

 そう考えると、今、500年ぶりぐらいの大きな革新の時を迎えているとも言えます。紙からデジタルへというシフトです。

(内容の詳細は動画を御覧ください)

ラインアップ(全10回、毎週水曜日掲載)
  • 01 歴史と絵画で学ぶと会計はこんなに面白い
  • 02 簿記と銀行がイタリアで生まれた理由
  • 03 ダ・ヴィンチも読んだベストセラーと「フローとストック」
  • 04 オランダ「東インド会社」の誕生とレンブラント
  • 05 「鉄道マニア」と減価償却の深い関係
  • 06 初代SEC長官はインサイダーで大儲け?
  • 07 四半期決算と会計のルール
  • 08 いかに効率よく働かせるか~原価計算と管理会計の誕生
  • 09 マッキンゼー教授が始めた経営に使える会計講座
  • 10 ビートルズと未来を見る「ファイナンス」の深い関係
※今後の内容は変わることがあります
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田中 靖浩(たなか・やすひろ)
田中靖浩公認会計士事務所所長

1963年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社などを経て現職。ビジネススクール、企業研修、講演などで活躍する。著書に『会計の世界史』(日本経済新聞出版社刊)『米軍式 人を動かすマネジメント』(同)。田中靖浩公認会計士事務所

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