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(前回の記事「数字を使わずに学ぶと、会計はもっと面白くなる」から読む)

田中靖浩(公認会計士):今回は簿記についてお話をしようと思います。

 簿記とは、経理の仕事に必要な帳簿を作る技術です。帳簿をつくらないともうけがいくらか分からない。商売をやるならば、きちんと帳簿をつけなければいけないことは分かるでしょう。

 一方、簿記がどの国でいつ始まったのかは、簿記を勉強している人でも知らないと思います。

白井咲貴(日経ビジネス):確かに考えたことなかったです。

田中:歴史をきちんとたどることは、物事の全体像を理解する上で非常に重要です。簿記がイタリアで始まったことは知らない方が多いのではないでしょうか。

 実は銀行のルーツもイタリアなんです。銀行は英語で「bank=バンク」と言いますけど、イタリア語では「banco=バンコ」。簿記と銀行がイタリアから始まったと聞くと、びっくりする人が多いでしょう。

白井:意外ですね。

田中:ここで簿記のいわれを説明するために、1枚の絵画を見ていただきたいと思います。これは、15世紀の終わりごろにヴェロッキオという人が描いた「トビアスと天使」という絵です。

アンドレア・デル・ヴェロッキオ「トビアスと天使」(写真:Polaris/amanaimages)

 左側にいるのが大天使ラファエルです。その横を歩く赤いタイツの男の子がトビアス君です。トビアス君と彼を守る天使ですね。この絵がなぜ当時のイタリアの銀行や簿記の始まりに関係しているのか。実はトビアス君は商売人の息子で、お父さんの商売の売上金を回収する旅に出ているんです。売掛金の回収ですね。

白井:当時はお金を回収するのに旅に出るんですね。