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 まず先ほど述べた簿記ですが、内定者や新入社員に検定試験の受験を義務付けている会社が多いんです。だから50万人という受験者数になる。

 簿記が役に立たないとは決して言いません。いろいろな単語が理解でき、基本構造が理解できるという意味では多くの利点があります。ただ、決定的な欠点があるとすると、簿記って本当につまらないんですよ。実際の会社名が出てこないでしょう。

白井:出てこないです。

田中:架空の会社だと感情移入できないものです。また、主人公に全然“顔”がないですよね。

白井:ないですね。

田中:例えば映画「男はつらいよ」シリーズに出てくるような「タコ社長」みたいな人が出てくると面白いんですけど。

 また、簿記ってその後につながらない。簿記を勉強してそこでおしまいになる人がすごく多いんです。本当にもったいない話です。動物園で例えれば、入り口付近の最初の動物だけを見て、「つまらないな」と思って帰ってしまうのと同じです。後の方に目玉の動物がいるのに。それはぜひ避けていただきたい、会計の役立つ面や面白さを感じていただきたいというのが、この本の執筆動機でした。

 そのために、まずは数字を使うのをやめようと思いました。

 また、徹底的に人間をフィーチャーして物語をつくっていった。それによって会計に感情移入してもらい、読者を飽きさせずに最後まで進む。さらには、会計の全体像を説明することを心掛けました。簿記=会計ではないと。簿記は動物園に入ったところにある最初の檻(おり)で、後のほうにいっぱい見ごたえのある動物がいるんですよと説明したかった。

 とはいえ、一番古い歴史を持つのが簿記なので、簿記から話を始めています。そこからどんな国で、どんなことが起こって会計が複雑になっていったか。いろいろな機能を持っていったかを全部説明したかったんです。多くの本は断片的だったでしょう。決算書の読み方を勉強する本、ファイナンスはファイナンスでまた別の本があるなど、断片なんですよね。

会計の勉強は「お得」です

田中:白井さんは入社2年目でしたか。

白井:はい、2年目です。

田中:会計は勉強した方がいいと思いますよ。

白井:はい。

田中:会計の勉強って絶対お得。投資に対するリターンが大きい。本当にお得だと思います。会計の知識や内容は、どんな会社に行っても絶対に付いてきますから。