移住してきた「よそ者」と、地元の人々が、自然と融合していくようになった。そして、移住者が地域の「良さ」を掘り起こして発信し、次代につなげていく。

祭りを中心に結びつく

 進出企業の一つ、「まめぞうデザイン」社長のドウゾノセイヤは、祭りの歴史をまとめた冊子を作り、その内容を神社のホームページにも掲載した。一番古い太鼓屋台は、1795年に大阪・堺の職人を集めて作られたとも伝えられている。

 「地元民も知らなかった歴史が綴られている」。町長の影治はそう唸った。

 だからだろうか。「新たな住民」を祭りの中心に置こうとする。

 16年9月に進出した大阪市のネット営業会社、ブックスタンド社長の笹本正明は、翌月にいきなり目立つ場所で太鼓屋台を担ぐことになった。テレビのニュースに何度もその姿が流れ、「地元の顔」になった。どこに行っても、昔からの住民のように声を掛けられる。

 笹本は、大阪と美波町を行き来しながら業務を続ける。久々に美波町に戻って、オフィスとして使っている古民家で寝ていると、近くの住民が勝手に上がってくる。

「戻ってきたんだったら、飲みに行こうよ」

 静かな海に日が落ちる。そのころ、若者から老人まで交じっての宴席の光が、町のあちこちに灯る。その点のような光が、少しずつ着実に増えている。

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