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 注目の美術展や企画展などのキュレーターが、見どころを語る本連載。単に訪れるだけでは分からないような隠れたストーリーなどもつまびらかにしながら、展示の見どころを語ってもらう。

 先月から4回連続で紹介しているのは(今回が最終回)、現在、日本科学未来館で開催中の企画展「マンモス展」。同館では2006年にも「マンモス展」を開催している。当時は、地球温暖化への警鐘もメッセージとして伝えていた。それから13年。テクノロジーは驚くようなスピードで進化し、同時に地球を取り巻く環境も変わっている。さらに今回は、マンモスの鼻の一部など、世界初公開のものも5点展示している。永久凍土の中から出てきたマンモスの冷凍標本を、本動画で紹介しよう。見どころを解説するのは日本科学未来館の松岡均氏だ。

今後、マンモスの研究はどのように変わっていくのでしょう。

松岡氏(以下、松岡):保存状態のいいサンプルを使って、研究者たちがいろいろなことをしようとしています。日本では、近畿大学がマンモスを復活させるプロジェクトを進めています。ここでは、それも紹介しています。

 マンモスの細胞を活用して、クローン技術を使うことで、マンモスを復活させる試みをしているのです。ただ残念ながら、ある程度のところまでは進んだのですが、今の技術ではマンモスを完全に復活させるのは難しいと分かりました。

 科学技術の進歩は非常に速いので、これからいろいろな技術が開発され、マンモスを復活させることもできるようになると期待しています。事実、近畿大学でも次のステップとして、マンモスを復活させるために新しい試みを始めています。

 近畿大学には、いろいろな研究者や研究チームがあり、彼らが協働して初めて、マンモス復活の1歩手前まで研究を進めることができました。タンパク質の解析やサンプルを取り出す技術、遺伝子解析技術など、それぞれの研究者たちが協力して初めて可能になったのです。実際、研究解析に使った実験装置と同じものも展示しています。

 会場にはマンモスの模型も展示しています。これは、これまで見つかった冷凍標本などを基に模型を製作しているので、かなりリアリティーがあります。まだ実際に、模型のようなマンモスを復活できてはいないのですが、現在では冷凍標本から、いい保存状態の細胞が採取できます。これを使うことで、将来、本物のマンモスを誕生させられるかもしれないのです。

 近畿大学は、クローンの技術を使ってマンモスを再生させようとしていました。ただこれだと、クローンですから、再生させるには別のゾウ、例えばアジアゾウの子宮を使って、出産させなくてはなりません。けれど、アジアゾウ自体も絶滅危惧種です。ほかの動物を犠牲にしないといけないなど、マンモスをよみがえらせるためには、技術的な問題だけでなく、倫理的な問題も横たわっているのです。

 そのため、実現することが難しい、というのが現状です。