注目の美術展や企画展などのキュレーターが、見どころを語る本連載。単に訪れるだけでは分からないような隠れたストーリーなどもつまびらかにしながら、展示の見どころを語ってもらう。
先月から4回連続で紹介しているのは(今回は第3回目)、現在、日本科学未来館で開催中の企画展「マンモス展」。同館では2006年にも「マンモス展」を開催している。当時は、地球温暖化への警鐘もメッセージとして伝えていた。それから13年。テクノロジーは驚くようなスピードで進化し、同時に地球を取り巻く環境も変わっている。さらに今回は、マンモスの鼻の一部など、世界初公開のものも5点展示している。永久凍土の中から出てきたマンモスの冷凍標本を、本動画で紹介しよう。見どころを解説するのは日本科学未来館の松岡均氏だ。
冷凍標本について教えてください。
松岡氏(以下、松岡):「現在」のコーナーでは、いろいろな冷凍標本が発掘されているので、そういったものを展示しています。2018年8月に発掘調査に行った時に見つかったものも、世界初公開として、展示しています。
冷凍標本として展示しているものの1つが、マンモスの皮膚です。厚さが2センチメートルぐらいあります。マンモスが、厚い皮膚によって、当時の寒い環境から身を守っていたことが分かっています。
またマンモスの皮膚の手前には、子供のウマの冷凍標本も展示しています。
これはまだ生後数週間しかたってない状態ですが、非常にいい保存状態で見つかっており、実際に血液や尿もここから採取されています。
これまでにも動物の化石はたくさん見つかっていました。けれど最近は、永久凍土の中から、冷凍の状態のいろいろな動物が見つかっています。
今回はその冷凍標本を展示していますが、永久凍土の中は気温が低いだけでなく、湿度もかなり高い状態です。それが、冷凍標本の保存状態には適していたんです。今回、冷凍標本を展示している冷凍庫も、気温はマイナス20度に設定していますが、単に温度が低いだけではなく、湿度が高くなるような特殊な工夫をしています。
同じ状態で運ばないといけないので、輸送にも非常に気をつけています。
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