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 注目の美術展や企画展などのキュレーターが、見どころを語る本連載。単に訪れるだけでは分からないような隠れたストーリーなどもつまびらかにしながら、展示の見どころを語ってもらう。

 今週から4回連続で紹介するのは、現在、日本科学未来館で開催中の企画展「マンモス展」。同館では2006年にも「マンモス展」を開催している。当時は、地球温暖化への警鐘もメッセージとして伝えていた。それから13年。テクノロジーは驚くようなスピードで進化し、同時に地球を取り巻く環境も変わっている。さらに今回は、マンモスの鼻の一部など、世界初公開のものも5点展示している。永久凍土の中から出てきたマンモスの冷凍標本を、本動画で紹介しよう。見どころを解説するのは日本科学未来館の松岡均氏だ。

今回、「マンモス展」を企画した狙いを教えてください。

松岡氏(以下、松岡):そもそもマンモスが何か、皆さんご存じでしょうか。「マンモス」という名前は聞いたことがあると思います。

 マンモスはゾウの仲間です。ゾウの祖先は、今から6000万年くらい前にアフリカで誕生し、世界中に広がっていきました。今、生き残っているゾウは3種類だけですが、絶滅したものも合わせると、これまでには180種類くらいいたと言われています。

 その絶滅した1種が、マンモスです。そして実は、マンモスにもいくつか種類があります。

 今回の「マンモス展」で展示しているのは、寒い場所に適応して進化した「ケナガマンモス」という種類です。

 これまでにも、2005年には「愛・地球博」でマンモス頭部の冷凍標本が展示されました。その翌年の2006年には私たち日本科学未来館でも、最初のマンモス展を開催しました。この時は「なぜマンモスが絶滅したのか」というところに焦点を当てて、環境問題をテーマにしました。

 けれど、それから13年がたち、かなり状況が変わってきました。

 もちろん環境問題は今も深刻な課題です。特に地球温暖化が進んだことで、当時よりもたくさんの冷凍標本が発掘されるようになりました。それは、古生物学の観点から見れば非常にいいことでしょう。

 「化石」には骨の情報しかありません。けれど冷凍標本には、筋肉や皮膚、毛もそのまま残っている場合がある。それを調べることで、その生き物の生態や当時の環境がかなりよく分かってきます。そうやってたくさん分かってきたことが、今回の企画展の大きなテーマになっています。

 また生命科学が進歩したことで、発掘された標本を使ってマンモスを復活させようという試みも生まれています。現実的にはなかなか厳しいのですが、将来、科学が進歩すると、マンモスをよみがえらせることも可能になるかもしれません。

 もちろん、それはいろいろな可能性を広げることになりますし、同時に多くの問題が新たに起こってくるはずです。では、未来に向けて私たちは何を考えなくてはならないのか。そういったことも、本展できちんと紹介しています。