着物コレクターだったクリムト

小林:クリムト自身も着物をコレクションとして持っていたので、そういうものの影響があったかもしれません。それも単に同じように取り入れるのではなく、非常に独創的に、自分なりに取り入れています。

 例えばこれは、エミーリエ・フレーゲという女性の若い時代を描いた肖像画ですが、額縁があって、そこに植物が描かれています。日本風のモチーフが取り入れられていて、余白がある配置の仕方をしている。

 西洋らしい肖像画と和風の額が組み合わされて、異質なもの同士が不思議と調和していたりする。そういうところを見ると、私たちはそれが日本風だと分かると思います。

 あとは先ほども説明した金箔。クリムトは、浮世絵もだいぶ持っていました。自分が持っていたものを参考にして作品を描くこともあり、素描の中にも恋人たちの親密な様子を表現しているものがあります。

 今回はそういった素描もいくつか紹介していますが、その中には春画や日本の浮世絵など、クリムトが参考にして描いたというものもあります。

 今回の展覧会の中では、当時の欧州で触れることができた浮世絵を展示しています。浮世絵とクリムトの作品を見比べると、どの辺りに日本美術の要素を取り入れたのか分かるのではないでしょうか。

ほかの見どころはありますか。

小林:『女の三世代』という作品ですね。

グスタフ・クリムト《女の三世代》 1905年 油彩、カンヴァス 171×171cm ローマ国立近代美術館 Roma, Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea. Su concessione del Ministero per i Beni e le Attivita Culturali
グスタフ・クリムト《女の三世代》 1905年 油彩、カンヴァス 171×171cm ローマ国立近代美術館 Roma, Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea. Su concessione del Ministero per i Beni e le Attivita Culturali

 これは、クリムト黄金様式の時代の1905年の作品です。若い女性と赤ちゃん、そしておばあさんという、世代の異なる3人の女性が描かれています。これは「女性」というよりも、「人間の3つの段階」を象徴的に表しています。

 特定の誰かを描いたというよりも、人生というものを3人の人物で表現している。人物の描き方も結構、図形っぽいですよね。あまり自然ではない感じがする上に、背景には色とりどりの模様があります。

 金だけでなく銀も用いて、ちょっと幻想的な背景を作り上げている。そして、何かの物語を表現しているというよりは、やはり象徴的というか人生を表現している。一応、人間を描いてはいるけれど、普遍的な作品として描かれています。

「クリムト展」ラインアップ 全4回(毎週金曜更新)
  • 01 クリムト、「異端児」に生まれ変わった35歳
  • 02 幻想的な“運命の女”に込めたクリムトの覚悟
  • 03 絢爛のクリムト作品に、ジャポニスムの影響!
  • 04 婚外子は14人!波乱万丈の人生が大作の原動力?
※今後の内容は変わる可能性があります
>> 一覧

【概要】

  • 美術展 :「クリムト展 ウィーンと日本 1900」
  • 期間 :2019年4月23日~7月10日
  • 開館時間:9時30分~17時30分 ※金曜日は20時まで(入室は閉室の30分前まで)
  • 開催場所:東京都美術館
  • 住所 :東京都台東区上野公園8-36
  • サイト :https://klimt2019.jp/
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