ヒットしたビジネス書の著者に話を聞く本連載。7月8日から4回にわたって登場するのは、現役東大生であり、ベストセラー作家の西岡壱誠氏。
西岡氏は、東大合格者ゼロの無名校のビリ(元偏差値35)だったが、一念発起し、東大を受験。2浪したものの、浪人時代に「点の取り方」を誰よりも研究し、見事に東大に合格。ここで蓄積したノウハウをまとめた書籍を数多く執筆。一躍、現役東大生のベストセラー作家となった。
中でも今回紹介するのは今、注目を集めている『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』『「伝える力」と「地頭力」がいっきに高まる 東大作文』(ともに東洋経済新報社)、『“なぞなぞ”&“身近なテーマ”で楽しみながら「自分で考える力」を鍛える 東大ドリル』(ワニブックス)という3冊だ。
「東大」というブランドを前面に打ち出しているため、つい学生向けの勉強指南本かと思いきや、読者層はもっと幅広いという。東大書籍シリーズがどのように誕生し、広がっていったのか。これらの本に西岡氏が込めた思いは何か。話を聞いた。

東京大学4年生、作家
偏差値35から東大を目指すも、現役・1浪と、2年連続で不合格。崖っぷちの状況で開発した「暗記術」「読書術」、そして「作文術」で偏差値70、東大模試で全国4位になり、東大合格を果たす。東京大学で45年続く書評誌「ひろば」の編集長を務める。講談社「モーニング」で連載中の「ドラゴン桜2」に情報を提供する東大生団体「東龍門」リーダーを務める。全国4つの高校で「リアルドラゴン桜プロジェクト」を実施、高校生に勉強法を教え、静岡県沼津市にある誠恵高校では理事長付学習特別顧問を務める。『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』(東洋経済新報社)など著書多数。1996年生まれ。
『東大作文』について教えてください。
西岡氏(以下、西岡):これは『東大読書』の続編として出しました。
経緯をお話しすると、もともと僕はモノを書くのがとても苦手でした。ただ東大の入試はすべて記述式です。つまり、うまく説明できないと点が取れないという、非常にシビアな試験です。
この試験にどう対応すればいいのかと考えて、僕はまず読書の方法を変えました。どういうふうに本を読めばいいのか考えたわけです。その過程でインプットをしても、アウトプットが大事なんだと分かったんです。
けれど、どうやってアウトプットの力を鍛えればいいのか非常に悩んだ時期がありました。自分の中で工夫をしたり、伝え方を変えていったり、試行錯誤を重ねていく中で生まれたのが、本書に書かれているノウハウの大前提になったのです。
例えば人の話を聞いて「分かった」と思えたりしますよね。授業を聞いたり、本を読んだりして、「分かった」と思うタイミングがあります。
けれど、それを伝えるのはすごく難しい。僕が2浪した中で気づいたのは、「きちんと伝えられなかったら、きちんと理解できているわけではない」ということです。そこは表裏一体です。分かっていれば伝えられる。伝えられないなら、分かっていない。
世の中には色々な東大生がいますが、唯一、共通する勉強法が1つだけあります。それが、「ほかの子からの質問を受ける」という勉強法です。
東大に入るくらいだから、大半の学生は高校時代から頭がいいわけです。すると友達が、「ちょっとここが分からないんだけど、教えてくれない」「先生は何でこんなことを言っていたの」などと聞いてきます。このとき、理解している人は、きちんと説明できるんです。
そこで友達に説明をする。つまり他人に説明できるような状態になっている、ということです。そういうインプットができているからこそ、成績が上がる。自分が分かったような気になっている知識を、きちんと整理できているかどうか。その判断ができるんです。
そして、人に伝えられないことは、結局理解もしていないということです。
本書は『東大作文』というタイトルですから、まるで読書感想文か何かを書くためのノウハウ本のような印象を持たれるかもしれません。
けれど、冷静に考えてみてください。学生からビジネスパーソンまで、みなさん普段の生活の中で実にたくさんの「作文」をしていませんか。ノートも、メモ帳も、SNSも、ブログも、すべて作文です。会議の議事録だって作文です。
つまり他人に文章で伝えるタイミングは、実はたくさんあると思うんです。
そして本書は、何かモノが書けるようになるという以上に、誰かにきちんと説明するのがうまくなるためのものなんです。もしかすると、プレゼン術などに近いのかもしれませんね。
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