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 ヒットしたビジネス書の著者に話を聞く本連載。本日から4回にわたって登場するのは、就活クチコミサイト「ONE CAREER」を運営するワンキャリアの最高戦略責任者であり、作家の北野唯我氏。2018年に初の著書『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)を刊行し、12万部のベストセラーを達成。2019年刊行の『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』(日本経済新聞出版社)も8万部とヒットし、大きな反響を呼んでいる。

 『転職の思考法』では個人の働き方やキャリアに対して、『天才を殺す凡人』では日本企業の組織のあり方について一石を投じ、大きな反響を呼んだ。この2冊を通して北野氏が伝えたかったメッセージとは何か。話を聞いた。

北野唯我(きたの・ゆいが)氏
ワンキャリア最高戦略責任者兼レントヘッド代表取締役、作家
新卒で博報堂の経営企画局・経理財務局、ボストンコンサルティンググループを経験し、2016年ワンキャリアに参画し、最高戦略責任者に就任。2019年1月からは子会社代表取締役、社外IT企業の戦略顧問も兼務。デビュー作『転職の思考法』(ダイヤモンド社)は12万部を突破。2作目『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)は8万部を突破中。1987年生。

『転職の思考法』の概要を教えてください

北野氏(以下、北野):『転職の思考法』は、人が何度でも働き先を選べるような世界をつくるために書いたものです。しかも、それを物語形式でおもしろおかしく、実際のビジネスのシーンで起こり得るような切り口で描いています。

 これを書くきっかけとなったことが2つあります。

 1つは、今の日本の大きな問題として、団塊の世代が自分の仕事や今後のキャリアについて悩まれていると聞いたんです。新聞の取材で、今の50〜60代の左遷が大きなテーマになっていると耳にしました。

 これまでの日本経済は右肩上がりで、終身雇用を信じて生きてきた人たちが、ある日突然、日陰の部署に異動させられて、その先で生きていかなくてはならない。働く意味を失っている、と取材で相談を受けたんです。

 きっとその時は仕事を変える選択肢が視野に入るだろうし、「本当にこのまま、この会社にいていいのかな」と思うきっかけになると思いました。

 もう1つは、私と同年代の20代、30代の話です。ある時、東京・目黒の小さな一室でイベントを開くことになりました。「自分の名前で生きていく」というイベントで、私ともう1人の友人が開く、定員10人くらいの小さなイベントにしようと考えていたんです。けれど、そこに300人くらいが集まりました。

 しかもその300人というのが、いわゆる総合商社や外資系コンサルティングファーム、投資銀行、広告代理店といった、就活ランキングで本当に上位に入るような企業に勤めている人たちだったのです。彼らは東京大学や慶応大学、早稲田大学などの出身者がほとんどなんですね。

 いわゆる高学歴で、そのまま就活ランキングで人気上位の企業に入社した。それなのに、必ずしも皆さん、キャリアに対して満足しているわけではなくて、「本当にこのままでいいのかな」と悩んでいるんだと感じました。

 これまで「転職」というのは、何となく裏切り者がする行為だと思われていましたよね。けれど、『転職の思考法』ではそれに一石を投じました。

 『転職の思考法』を出してうれしかったのは、ある転職エージェントの経営トップの方が、社員にこの本を渡して、「全員読め。これを教科書にしろ」と言ってくれたことです。

 それは恐らく、私が書いたことが理論として、ある程度成り立っているという証左でもあるし、かつ、求職者の方が『転職の思考法』を読んで訪れてくるので、彼らと同じ言葉で話せるように読んでくださいということでもあったそうです。

 『転職の思考法』が出た後、街で声を掛けられることがありました。それくらいのインパクトを与えられたなと思いましたが、プロが見ても十分納得できる内容だったのだなとも思いました。