なぜ発売から2カ月後にいきなり売れたのでしょう。

宣伝じゃなくて、クチコミで売れた

伊藤:つまり宣伝っぽい宣伝はある意味では、発売2カ月半後くらいから始まっているんです。それが、売り上げが加速する要因にはなっているんだけど、ただそれでも、売り上げが伸び始める最初のカーブを生み出したのは、多分、宣伝やプロモーションによるものではないと思っています。

 おそらくは一つ、あるとすれば、「これ、いいよ」ってみんなが伝えてくれて、クチコミで広がったということです。

 例えば社長さんが「社員にちょっと読ませよう」とか、課長が「チームメンバーにこれをちょっと読んでもらおう」という形で、宣伝をしていただいている。

 コマーシャルをマスに打って、新聞広告や雑誌広告、鉄道広告やウェブ広告といったところで宣伝するのではなく、人づてにクチコミで伝わっている感じはありました。

 ですから当時、(SNSの)インスタグラムやツイッターで調べていると、本当に、毎日1回ぐらいは、「これを読んだけど面白い」というクチコミがありました。明らかに、クチコミが多かった。

 普通のビジネス書は最初の発売の時期に部数がどーんと伸びて、あとは落ちていきます。

 ただ当たり前だけれど、「バズる」ってどういうことかというと、自分が誰かから聞くわけです。つまり1人から聞いて、その人が2人以上に話をしたらバズるわけです。そこをやれたんだなと思います。

 理由の一つは「すぐに読める」ということ。これが大事で、下手したら1時間半で読んで、「いいよ」と誰かに伝えられたら、バズりやすくなりますよね。あとはやはり、「すぐに使える」こと。理解するのに時間がかかるのではなく、「ああ、これに気を付ければいい」と感じて、すぐに使えること。

 そしてもう一つが、案外、プロフェッショナルの方に評価をいただいているんです。ライターや放送作家、コピーライター、アナウンサー、俳優……。こういった、コミュニケーションを生業にするような方々から評価をいただけました。

 (放送作家・脚本家の)鈴木おさむさんと、(サントリー「伊右衛門」などを手掛けたコピーライターの)小西利行さんがおっしゃっていたのは、「頭の中で考えているのはまさにこれなんだ」と。「けれど、その言語化ってなかなかできない。何となくやっちゃっているから」「よく言語化できたよね」とおっしゃっていたんです。

 ですから(ヒットした)最後の一つは、そういうプロフェッショナルが使っている頭の動きを言語化したところにあるのかな、と感じています。

 そして、なぜ僕がそれができたかというと、(スタートアップ経営者などに)稽古をつけているからです。

この先、どういった読者に『1分で話せ』を伝えていきたいでしょうか。

伊藤:ビジネス書に興味を持っている方には、もうほぼ知っていただけていると思います。けれど、仕事をされている方で、本をあまり読まれない方はまだいっぱいいるわけで、そういう方たちの中には、本を読まなくてもできる方もいれば、本を読んだり、どこかから学んだりすればもうちょっと人に伝わる話し方ができるようになる方もいるはずです。

 そういう人たちに届けきれているかというと、本当に全然まだまだだよなと思っていて……だから、届けたいですよね。

次回作で「伝えたい」ことは何でしょう。

「大丈夫、大丈夫」と言ってあげたい