ヒットしたビジネス書の著者に話を聞く本連載。2018年春に刊行され、つい先日には30万部の大台に乗り、今なお売れ続けているベストセラー『1分で話せ』(SBクリエイティブ)。
著者の伊藤羊一氏は、Yahoo!アカデミア学長やグロービス経営大学院客員教授として活動し、普段からスタートアップの起業家たちにプレゼン方法を伝授する活動を重ねてきた。そこから導きだした「1分で話す」ためのポイントとは何か。そして伊藤氏が本書に込めた思いとは何だったのか。話を聞いた。

ヤフー コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長 ウェイウェイ代表取締役。東京大学経済学部卒。グロービス・オリジナル・MBAプログラム(GDBA)修了。1990年に日本興業銀行入行、企業金融、事業再生支援などに従事。2003年プラスに転じ、事業部門であるジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、事業再編などを担当した後、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括。 かつてソフトバンクアカデミア(孫正義氏の後継者を見出し、育てる学校)に所属。孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEOコースで年間1位の成績を修めた経験を持つ。2015年4月にヤフーに転じ、次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ科目の教壇に立つほか、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター、アドバイザーを務める。
『1分で話せ』は、話し方のスキルを伝える本なのに、行間からは書き手である伊藤さんの生き方や価値観が伝わってきます。
伊藤氏(以下、伊藤):この本を書く前に編集者の多根さんがいらして、「伊藤さんの真正面直球を読みたいんです」と言われたんです。「じゃあプレゼンですかね」と答えました。プレゼン……というか、コミュニケーションのことを書きましょう、と。そこで「伝え方」をテーマにしました。
ただ、それでも「自分の思い」というよりは、要するに「気合を入れろ!」とか「情熱なんだ!!」みたいなことよりも、自分の経験やスキルを全部出してみようと思ったんです。ですから、やっぱりマインド的な要素は除いているつもりでした。ところがその思いがにじみ出ちゃっているので、「そうなんだな、にじみ出るんだな」と改めて感じました。
自分の経験を言語化しているので、スキルを書いているんだけど、スキルになってないというか、考え方になっているんでしょうね。
にじみ出てきた伊藤さんの生き様や価値観に、読者が共感したのでしょうか。
伊藤:発売してからの日付と増刷のペースをグラフにまとめているんですね。発売したのが2018年3月で、およそ2カ月半後の5月とか6月頃に、いきなり売れ始めました。
逆に言うと、それまでは全然売れてないんです。「全然売れてない」ということはないにしても、やっぱり本屋には並んでなかった。ちょうど(2018年の)5月下旬と6月中旬に新聞広告を出したんです。ですから、きっと新聞広告も効いているんだとは思うんです。
ただ、新聞広告が効くといったって、新聞広告を出した本が全部売れるかというと、そんなわけではありません。
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