いつも、自己嫌悪ばかりだった

ビジネスパーソンの多くが、「伝える」ことについて、そこまで深く考えていなかったのでしょうか。

伊藤:人間は、話せば分かるんです。1対1で時間があるときは、相手に伝わらなかったら、「分からないよね、ごめんごめん」と別の話し方に言い換えることができる。

 だけど一期一会で、例えば1対300で話をするときとか、そんなに何回も話せないときもあるわけです。そうすると、1回1回の一瞬が勝負だったりする。その一瞬をどう表現するかというのは、それはもう、むちゃくちゃ考えるわけです。

 この「一瞬」といったとき、僕はその一瞬でうまくいったケースとか、その一瞬をないがしろにしたために失敗したケースを思い浮かべています。これがすごく大事なんです。

 この「大事」というときも、例えば「大事だよ」と自分の子どもに言って聞かせるように、「大事」という言葉を口にしています。そういう言葉のひと言ひと言に、意味を込めていった方がいいわけです。

 ただ、そんなことをいきなりやれと言われてもよく分からないから、やったら振り返り、やったら振り返りということ繰り返していく。すると、だんだんと伝わるようになっていく。

 例えば僕は今、実際には「一瞬」のうまくいった例もうまくいかなかった例も話していないれど、それでも話を聞いていると、「ああ、この人は一瞬でガッとつかんだこともあれば、一瞬で痛い目に遭ったこともあるんだろうな」と感じてくれるんだと思うんです。

 言霊ではないけれど、言葉に思いを乗せて伝えることによって、伝わり方は全然違う。

 「1分で話せ」と言っても、どう言うかで全然違いますよね。1分で話すことを意識して言うようにするし、何回も繰り返して、コミュニケーションをなめずに続ける。伝え方がうまくいかなかったが故に、伝えたいことが伝わらないのはもったいない。それを避けるためには、やっぱりとことんまで考え抜く。それが大事なんだと思うんです。

今でも自分の伝え方を振り返っているのでしょうか。

伊藤:毎日ですよ。基本、僕は自信が無いんです。自信が無いので、毎回、人前に立って話をすると、終わった後ですごい自己嫌悪です、常に。

 「うわあ、あんなこと言っちゃった」みたいケースもあれば、「もうちょっと言い方があったな。こういう例を出せば良かったのに、何で思い付かなかったんだ」みたいなこともあります。「もっと元気にいけばよかったな」とか。人前で話す全ての機会で、必ず自己嫌悪に陥ります。

 もちろん「やりきった! 気持ちいい!」というケースもあったりするけど、それだけで終わることは絶対無いですよね。

ラインアップ 全4回(毎週月曜日掲載)
  • 01 「みんな、伝えることに悩んでいる」
  • 02 「伝えることのゴールは人を動かすこと」
  • 03 「僕は、伝えることがとても苦手だった」
  • 04 これまでの生き方がにじみ出た
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