言いたいことを言うだけでは、人は動かない

本書の中で「伝える」ことのゴールは「人を動かすことだ」としています。
伊藤:仕事には3段階あると思っているんです。まずは、自分のやる気に火を付けるということ。これが1段階目です。2段階目は、それを形にするということ。そして3段階目が、それを伝えて動かしていくということ。この3段階目を総括して、この本を書いているつもりなんです。
この本では『1分で話せ』と言っているんだけれど、「話す」だけじゃなくて、「動かす」ことがゴールなんです。
動かすときには無言で目だけで合図したりする方法もあるんだけれど、それだけじゃなくて、やっぱり言語のコミュニケーションが非常に大きい。だから、言語のコミュニケーションをベースにして、要は「相手を動かす」ことをやろうとしているんです。
相手を動かすには、自分が言いたいことだけを言っていても動くわけはありません。相手のニーズを探りながら、自分が伝えたいことをスッとそこに乗せていく。それはもう「コミュニケーション」と言いながらも、結局はビジネスパーソンとして、「自分が思ったことはやり抜くのだ」みたいなことですよね。そういう部分に極めて近付いてきているんです。
それが僕の生きざまみたいなところにつながっていて、生きざまにつながっているから、「読んでいて熱くなりました」という感想をいただけたりしたんだと思います。
僕は感情なんて、ほとんど交えないで書いているつもりなんですけど、それでも「熱くなりました」「人前で話したくなりました」という感想をいただける。結果として、そういうことになったんだと思うんです。
多くの人が、「人を動かせない」と悩んでいるのでしょうか。
伊藤:はっきり言っちゃえば、みんな自分勝手なんですよ。自分が言いたいことを言っている。それでは人は動かないよ、という話です。
相手にこう動いてほしいと思っているなら、言い方も変わってくるはずです。それを分かりやすく言えばいい。大人に話すときだって、相手によって言い方を変えますよね。それを意識できていますか、という話です。
相手によって言い方を変えましょう、と言うと「何かせこくないか」とか「正しくないんじゃない」と言われるんですけど、そうではないんです。だってみなさん、小さい子どもに話すときには大人同士のような話し方はしませんよね。自分が視線を下げて、「そうでちゅね」「よかったでちゅね」と言っているはずです。
小さい子どもにそう話すのと同じように、大人でも、例えば社長に話すときと、チームのメンバーに話すときには当然、話し方は違います。
それを無意識にやるんじゃなくて、意識して、相手のニーズに合わせるような形でやる。僕は、それがすべてだと思っています。相手を意識しないで、自分が言いたいことだけ一方的に話していたら、聞いている人は「何なんだよ」となります。そこなんです。
- 01 「みんな、伝えることに悩んでいる」
- 02 「伝えることのゴールは人を動かすこと」
- 03 僕は「伝えること」が苦手だった
- 04 これまでの生き方がにじみ出た
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