人事って何か面白いことやってるじゃん

妹川:JTの取り組みが変わったことかどうかは別として……(笑)。でも、やはり変わったことと言うのが一番分かりやすいのかな。それは弊社が変わったことをやるのが好きだからじゃないでしょうか(笑)。私に限らず、代々の人事部長がそんなことをやってきました。

 私たちが毎年開催している「突き抜ける人財ゼミ」は、決して新卒採用のためだけにやっているわけではありません。JTに入社してもらう目的ばかりではなくて、JTという会社に触れ、知ってもらって、参加した学生がその後、社会で活躍してくれればいい。そのきっかけに私たちが存在しているだけでもいいのかな、と考えているんです。

 きっとこれからの時代は、「正しい」「正しくない」という価値観ではなく、「好き」「嫌い」が物事を選ぶ基準になると思っています。人間はこれまで以上に、自分の心に従うようになる。消費者が商品やサービスを選ぶ基準は間違いなくそうなるでしょうし、採用もそう変わっていく。好きな会社で働きたい、と。

 そんな中で企業やそこに集まる人たちに求められるのは、高潔性や勇気なのではないかと思っています。それも、自己開示ができる勇気。そんな“大人”の「好き」「嫌い」は、わがままでも子供じみたものでもなく、美しいものだと思っています。そんな中で、私たち人事部は、働く人と直接向き合っています。ならば、まずは私たちが率先して自己開示する勇気を持たなくてはいけない。

 もちろん前例も大切にしなくてはいけないけれど、人事部の中で固く閉じてしまうのではなく、変わることに対して一番柔軟で、一番変化を楽しめる部署でありたい。まだまだ私たちの力が及ばないことも多いのですが、それでも「人事って何か面白いことをやってるじゃん」と思われるような挑戦を、もっとやってもいいんじゃないかと思っています。

三井物産が「合宿採用」に踏み切ったワケ

古川:共感する部分がたくさんあります。私も実は、人事総務部に来てまだ3年です。配属されて私が最初に思ったのは、「日本の制度や就職の習慣を変えたいな」ということでした。これまでは、毎年6月1日に学生の面接採用が解禁になって、主要企業はそこから3日間くらいで採用する学生を決めていました。

 ただ、私はこれにとても違和感がありました。たった30分の面接を3回くらい繰り返して採用する学生を決めていく。なぜこんな仕組みなのかとても不思議ですし、本当にそれで学生と企業のマッチングができるのかという点にも疑問を抱いていました。

 今の時代、終身雇用は音を立てて崩壊しつつあります。採用した学生がその後ずっと三井物産で働き続けるわけではないかもしれない。それでも、社会人として出発する段階で、どの企業で働くのか、どのセクターに配属されるのかということは、とても重要なことだと思います。

 それが何となく、6月1日からの数日であっという間に決まることに、強い違和感があったんです。とはいえ我々は経団連の加盟企業でもあるし、ルールは守らなくてはならない。そこで発想を逆転させてみたんです。採用面接が解禁になる6月1日「以降」であれば、いつ面接をしても自由なのではないか、と。そして、6月1日からの数日間で私たちや学生が焦って決断するよりも、数日間一緒に過ごす合宿採用に来てもらったらどうだろうと考えたんです。

 学生にも三井物産の姿をじっくりと見てもらって、我々も学生の皆さんをよく見させてもらう。そんな形があるんじゃないかと思って、2017年から合宿採用をスタートさせました。

 妹川さんのおっしゃる通り、人事も絶えず挑戦を重ねて、新しいものをどんどんと取り入れていくべきです。守るべきものがある一方で、変えていけるものはどんどん改善していく。その一つが、「合宿採用」だったんです。
(連載4回目は4月5日に公開予定)