「50人の壁」でマイナスの空気が充満

(右から)キャディ・加藤勇志郎社長、ヤプリ・庵原保文社長、オクト・稲田武夫社長
(右から)キャディ・加藤勇志郎社長、ヤプリ・庵原保文社長、オクト・稲田武夫社長

オクト・稲田武夫社長(以下、稲田):すごく共感できますね。庵原さんのところも天才エンジニアと3人で創業していますが、オクトもすごくとがったエンジニアと僕の2人で創業しました。

 それで、うちでもそのエンジニアが1カ月ぐらい会社に来ないことがあったんです。Slackも反応がない。確かまだメンバーが6人くらいの頃のことです。年に1回くらい、そういうイベントってありますよね。

 あと僕自身が一番つらかったのは、「50人の壁」でした。今、オクトは社員数120人まで増えたんですが、50人の頃に営業組織の雰囲気が一度、悪くなりました。

 チーム間でリーダークラスの考え方に距離ができて、少し社内が分裂したように感じてしまって……現状の営業体制に対する不満が噴出したり、人が辞めたりしていきました。そうなると、どうしても社内全体が疑心暗鬼になって、「飲み会の中でこんな会話があった」とか、とにかくマイナスの空気が充満するんです。

 このときの経験を乗り越えて、今はすごく雰囲気が良くなりましたが、当時は毎日3~4人と1対1の面談を2時間ずつしていました。1カ月も面談をし続けたのにあまり空気が変わらなくて、情けないのですが、「自分一人で解決でいきほど組織の運営は簡単じゃないんだな」と学びましたね。当時はとてもつらかったけれど。

武田:加藤さんはいかがですか。

キャディ・加藤勇志郎社長(以下、加藤):半分冗談みたいな話ですが、僕はキャディを共同創業者とスタートしたんだけれど、彼は半年間、会社に来なかったんです。

 僕の共同創業者は日本人なんですが、ほぼアメリカで育っていて、アップルの米国本社に勤務していたんです。キャディを11月に創業するから日本に来て一緒にやろうという話になったんだけれど、創業しても来ないんですね。「あれ?来ないな」と思って連絡してみたら、「年内まではかかる」と。

 ただ、待っていて年末になっても、やっぱり来ない。彼は国籍がアメリカだったということもあって手続きに時間がかかったようで、「2~3月になりそうだ」という話になりました。

 創業者2人きりのベンチャーなのに、相方がずっと来ないんです。そして3月になってもやっぱり来ないので、これはもう創業詐欺なんじゃないかと思うようになりました。渡した株式は回収できないし、どうしようと不安になっていたら、ようやく5月になってふらっと来た。今となっては冗談になりますが、当時はまあまあつらかったですね。

稲田:みんな、CTOが会社に来ないんですね。

加藤:CTOはなかなか来ないんですよね。

庵原:今回、登壇している僕らは3人ともプログラマーではなくて、経営サイドにいますよね。どうしても事業を運営する方が、口は立つし、間違った相手を詰めたりしがちです。エンジニアに「なんで会社に来ないの」と正論を振りかざしたりして。

 ただ大体失敗するのは、創業者の中で確執が生まれてけんかに終わるケースです。今の皆さんの話を聞いて、やっぱり一線を踏み越えない努力や耐える力、また相手のことを思うコミュニケーションが大切なんだなと思いました。

 相手にだってそれぞれ考えがある。その違う立場の人を理解しながら、自分の目的に向かうことがすごく重要なんだと。本当に創業してみると、信じられないことや普通の感覚では想定できないようなことばかり起こるので。

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