養うべきは「自分を好きになる力」

羽田:うちもやはり個人のキャリアビジョンを分かりやすい形で応援して、内発的動機付けを重視しています。利他主義の延長として、やりたい事業をプレゼンして採用になれば、数千万円くらい渡して、子会社社長になれるチャンスを用意しています。3年目くらいから社長になったという実績もあります。先ほど石川さんが示した10項目については、月1回ペースで社員にアンケートを取って、スコアが下がった社員はケアをするようにしています。

石川:僕の場合は大きな組織を率いているわけではありません。ただ人生100年時代に個人が最も安心感を得られるセーフティーネットは何だろうと考えた時、「コミュニティーから信頼されること」ではないかと思っています。

 その人が属するコミュニティーから信頼を集められると、何かあっても、その信頼をもとにほかの活躍機会を得やすくなる。つまり組織が個人に対してできるサポートも、コミュニティーから信頼を得るための支援なのかな、と思っています。

小林:今は昔と比べてコミュニティーの数も種類も豊富になっている分、ハッピーになれるチャンスは増えているかもしれませんね。

 僕がこれからの若い世代に身に付けてほしいと思うのは、「自分を好きになる力」です。自分自身を信じられて、好きになれる人は、どんな苦境に立たされても強いし、前に進める。これは我が子に対しても思っていることです。「自分を好きになる力」を育む方法については、まだ模索中ですが。

石川:最近のトレンドは、間違いなくそちらに向かっていますよね。プレゼンテーションのような自分を「外」に発信するスキルから、マインドフルネスに代表されるような自分の「内面」に向き合うスキルへ急速に進んでいます。

森山:個人のウェルビーイングに向けての支援として、僕がやっていることは2つあります。1つは先ほどもお話しした健康面での支援。もう1つは、今おっしゃっていた「自分に潜る力」を養う働きかけです。自分を知る力、見つめる力と言ってもいいと思います。

中竹:自分を見つめるための時間を、会社としてつくっているということですか。

森山:すごく大事にしています。具体的には「旅」です。社員へのインセンティブとして設計しています。非日常の環境に身を置くと、自分自身を外部化して見つめ直せる機会になるので。

中竹:非日常体験をレギュラー化しているんですね。

好きなことに固執しすぎてはいけない

石川:個人の幸せを高めるための考え方として、これからの長寿命時代には、積極的に自分を変えていく姿勢が大事な気がします。人生100年と聞いて「長いな」と感じるとしたら、それは同じ仕事をずっと続けているイメージを持つからだと思うんです。

 けれど、実際にはそんなことはあり得なくて、「人生100年時代=絶えず新陳代謝をせねば保てない時代」と理解した方がいい。「自分が得意で好きなことに固執しすぎてはいけない」と意識しながら。矛盾するようですが、これからは得意で好きなことを伸ばしながらも、それを捨てる勇気が求められる時代なのだと思います。

中竹:自己変容とも言いますね。

石川:特にスポーツ界はそうではないですか。

中竹:引退後のキャリアだけでなく、現役時代の役割の持ち方も変わってきています。最近は「2人キャプテン制」をとってリーダーシップの役割をシェアして結果を出すチームが増えています。強豪で有名なオールブラックスも、リーダーを複数持つチームです。さて、そろそろ最後の質問ですね。どうぞ。

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