ネガティブな雰囲気になった時こそチャンス

予防医学博士の石川善樹氏(写真左)
予防医学博士の石川善樹氏(写真左)

石川:冒頭に、評価に影響する要素として「エンディングのデザインが大事」という話をしましたが、実はもう一つ、「ピーク体験」という要素もあるんです。ピーク体験というのはネガティブな状態からポジティブへ、一気に振り切れるほどインパクトが大きい。

中竹:つまり、徐々に良くなるより、グッと上がる方が体験の評価は高くなる。

石川:会社がネガティブな雰囲気に傾いた時は、ウェルビーイングを高めるチャンスとも言えます。

羽田:当社の場合は、行動指針である「ガイドライン」というものがあり、会社のフェーズごとに改定していますが、有志の社員を中心に1年くらいかけて全社員から意見をもらいながら改定していく取り組みをしています。

小林:会社が大きくなるにつれ、全員が納得して満足できる制度づくりは難しいなと思います。社員数が1万人を超えてくると、社内イベントも、「1人も欠けずに全員参加」というわけにはいかないし……。

森山:会社と社員の間に信頼関係や情報の交換がしっかりとあれば、「会社に決定を託す」という行動になると思います。そしてきっと、楽天さんはそういう環境に近いんじゃないですか。

小林:きっとそうだと思います。

石川:「なぜ、今これをやるのか」という認識を合わせることは大事ですよね。先日、うちの3歳になる息子と空手教室の体験稽古に行ってみたんです。感心したのは、稽古を始める前に先生が子どもたちに、「君たちは今日ここに遊びにきたのかー?」って聞くんです。「違いまーす」「だったら映画を見にきたのかー?」「違いまーす」と。要は、「君たちは今日はここに空手をしにきたんだ」という認識合わせを毎回しているんです。これは大人の組織運営においても重要な儀式かもしれない、と思いました。

森山:結婚式を挙げるカップルとの打ち合わせでも、最初の認識合わせに最も力を入れています。大抵は男性の方が渋々連れてこられたという感じでいらっしゃるんですが、「結婚式は自らつくるもの」と認識を合わせられると、その後のコミットの深さが180度変わってきます。

個のウェルビーイングのためにできること

中竹:ここまで議論をしてきて、何となく全員の共通理解として、「組織のウェルビーイングのためには、組織を構成する一人ひとりの個人のウェルビーイングが大切である」という考えがありますよね。

 実は、スポーツ界のコーチングの分野でも、選手のキャリア支援のためのキーワードとして「スキル」や「ストラテジー(戦略)」に代わって頻出するようになったのが「welfare」、選手の一生にわたる心身の健康に対する支援という言葉です。皆さんの会社では、個人のウェルビーイングのための取り組みについてはどう考えていますか。

柴田:うちがたどり着いた方法はシンプルで、リーダー志向の強い人材を集めた上で、リーダーシップの育成につながるチャンスをたくさん提供するということです。具体的には、新入社員には1年間かけて「議論の進め方」や「予算の組み方」「プロジェクトマネジメントの方法」といった基礎概念を学べる研修を実施しています。そして、自分の配属も自分で決める。

 1つだけ全員に強制しているのが、最初はみんな、システム開発部に50%所属すること。残りの50%の時間で、好きな部署に所属してもらいます。全員が“社内パラレルワーカー”になる。システム開発部でITの基礎を学ぶ経験も、これからの時代のキャリアにはプラスになると説明しています。

 全体として、将来リーダーとして活躍したい人材の土台づくりになる環境を整えているということです。実際、個人の成長スピードはとても速いと思います。

中竹:それが個の幸せになる、と。

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