業務を1カ月休んで、全社員で世界一周!?

森山:制度あるいは権利がマンネリ化した時には、あえてそれを題材にして、全員で話すようにしています。創業2年目に、業務を1カ月休みにして、全社員で世界一周の旅をしたことがあるんです。お金がない中で、1500万円拠出して。

 いかにもモチベーションが高まりそうですよね。けれど、社員の中にはモチベーションが下がっている人がいたんです。この時に僕が何をしたかというと、モチベーションが高い社員と低い社員を組み合わせて、互いの意見を交換し合う時間をつくったんです。結局、消極的な理由は「旅慣れしていないことによる不安」だったと分かって、対策を練って解決できました。

石川:面白いですね。どんな制度を導入しても、喜ぶ人と喜ばない人がいる。その両極を引き合わせて話し合わせることによって、いろんな気付きがあるのだと思います。

森山:他者から見て学べることは多い。それも、「この制度はこういうところが素晴らしいんだよ」という説明を、会社が言うのと社員が言うのでは、全く印象が違うので。

小林:ちょっと心配になるのは、ネガティブなパワーとポジティブなパワーでは、ネガティブなパワーの方が勝ってしまうのではないか、という点です。話し合わせた結果、せっかくポジティブだった人が、ネガティブに傾いてしまうことはないんですか。

石川:確かに「好きになるのに理由はないけれど、嫌いな理由はいくらでも挙げられる」ということはありがちです。

森山:それはあり得ると思います。でもネガティブな感情は、吐き切ることでかなりの部分が解消されます。だから、うちでは社内の雰囲気が悪くなってきたと感じた時には、全員でA4用紙にネガティブな気持ちを全部書き出してもらって壁に張り出して、全員で黙って見るということをやっています。経営者としてはかなりきつい仕事ですが、これはかなり効きます。

石川:中竹さんも近い状況はありましたか。スポーツの世界は勝敗が明らかになるので、ネガティブに傾く時は急激に傾くと思うんです。

まずは「気持ちを受け止める」

チームボックス代表取締役・日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二氏
チームボックス代表取締役・日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二氏

中竹:私がやってきたのも、やはり「事実を受け止める」ということです。U20の監督を引き受けて間もない頃、ウェールズとの強化試合で、119対7で大敗したことがありました。予想以上に相手が強く、完全に鼻をへし折られた形でした。その夜のミーティングは葬式のような雰囲気になっちゃって……。ものすごくネガティブな空気が漂っていたんですが、私はあえて、全員に一言ずつ感想を言わせました。

 「悔しい」「日本に帰るのが恥ずかしい」……ネガティブな言葉が出尽くした後に、私が「そうだよね。確かに完敗だったよね」という話をしました。それから、「で、明日から何をする?」と切り替えたんです。「公式試合の前に気付いてよかった。今日の負けを学びに変えて、何から始めようか」と。

 後から分かったことですが、この年のウェールズはかなり強いチームに育っていて、その後の世界大会でも準優勝したんです。負けて悔しい気持ちを受け止めて学びに変えたことで、私たちのチームも成長しました。森山さんが話した通り、素直に受け止めることが大事だと思いますね。

森山:全員の気持ちを受け止めていないと、「気持ちを受け止められていない人がいることが気になる」という雰囲気が全体に生まれてしまうんです。

 それも、一番ネガティブな気持ちを抱えている当人が話さないとダメなんです。それを出し切ると周りも安心して、後はプラスに転じます。

 最後にイベントで感情を発散させて昇華させる、ということもよくやりますね。例えば、周年イベントや新商品発表のイベントも、社員が感情を爆発させるきっかけになる。感情は発散されないと、ベンチャーなんてそもそも、ないない尽くしでネガティブ要素が多い環境なので、理性的評価だけでは社員をまとめられません。

次ページ ネガティブな雰囲気になった時こそチャンス