「やりたい仕事ができて当然」と思える会社

小林:「楽天は創業期のモーターボートサイズから、今やタンカーサイズに成長した。それにもかかわらず、モーターボートのごとく軽快に舵(かじ)を切り、スピードを上げている。巨体でガーッと舵を切るから、途中で振り落とされる人もいるし、壊れる部品も出てくる。それでも完全に曲がり切った瞬間には、全く新しい風景が広がっている」

 そう書かれていて、その通りだと思いました。三木谷は振り切り方が徹底しています。英語強化の時期には、突然、私との会話をオール英語に変えて、一言も日本語を話さなくなりましたし。きっと私が甘えることを許さなかったのでしょう。ごく最近ですよ、2人の間で日本語が解禁されたのは。

 そこまでやるから、今では海外事業に直接関わらない社員も含めて、全員英語が話せる組織に変わることができた。

楽天CPO(チーフ・ピープル・オフィサー)の小林正忠氏
楽天CPO(チーフ・ピープル・オフィサー)の小林正忠氏

中竹:適切な揺さぶりがあるからこその成果なのでしょうね。

小林:きっと三木谷は、誰よりも人間の潜在能力を信じているのだと思います。

石川:実際、楽天の英語化は、ハーバード・ビジネス・スクールの必須授業で教えられるようにもなっています。日本企業の事例としては、確かトヨタ以来だったはずです。

中竹:ではここで、会場から質問も受け付けましょう。

質問者A:社員のウェルビーイングの充実と、事業の成長や継続。この両方を同時に成立させるために、どんな工夫を行っていますか。

ネットプロテクションズ代表取締役社長CEOの柴田紳氏(以下、柴田):社員が1つの仕事に没頭し続けてくれたらラクなんです。「営業が楽しい」とか「システム開発ならずっとやっていられる」とか。実際には決してそうならないので、自由な流動性は担保しつつ、目の前の仕事に注力してもらえる仕組みづくりに、日々頭を悩ませています。

 実際の取り組みとしては、システム管理やコールセンターといったルーティンワークが発生する業務については、そこを得意とするパートナー企業に請け負っていただいています。ルーティンワークをできるだけ減らした上で、配置にゆとりを持たせて、社員の各人が50%の力を出せば業務は回るようにしています。

 そして、残りの50%でやりたい仕事を自由にできるようにしています。普通の会社は、営業担当なら営業の仕事に100%コミットするものだと思いますが、うちの社員は「やりたい仕事ができて当然」と思っているからひどいんです(笑)。

ネットプロテクションズ代表取締役社長CEOの柴田紳氏(写真左)
ネットプロテクションズ代表取締役社長CEOの柴田紳氏(写真左)

中竹:経営としては絶妙なバランスを取っているんですね。羽田さんの会社ではいかがですか。

羽田:うちは、社員に自由を提供する前に社是である「利他主義」という価値観を共有しています。ユーザーやクライアントのために貢献することを第一として、貢献につながる自己実現を常に目標にしてね、という話をいつもしています。例えば異動希望を受ける際にも、「お客さんにとって最適な時期はいつだろうか」という視点で上司と相談してもらっています。

LIFULL CPO(チーフ・ピープル・オフィサー)の羽田幸広氏(写真左)
LIFULL CPO(チーフ・ピープル・オフィサー)の羽田幸広氏(写真左)

中竹:利他主義を前提とした自由。その順序を丁寧に伝え続けているということですね。次の質問、どうぞ。

質問者B:ウェルビーイングの慣れを解消するのに効果的な方法について、もう少し詳しく教えてください。

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