社長は「壁打ち相手」

柴田:はい。売り上げは前年比25~30%増で成長し続けています。先ほど、セイチュウさんがおっしゃったように、大事なのは体験だと思います。

 大学時代に学んだ社会心理学で一番印象的だったのは、ミハイ・チクセントミハイという米国の心理学者が提唱した「フロー状態にあると、人は幸福感を得やすい」という理論でした。フローとは、集中しながらもリラックスしていて、ハイパフォーマンスを発揮できる状態のこと。そのフロー状態を全社員にいかに提供できるか、という気持ちでずっと組織づくりをしてきた感覚です。

石川:こうやって組織図を拝見すると、「社長って何だろう?」という根本的な問いが生まれてきますね。

中竹:社長の役割は、実は「何もしない」ということかもしれない。

柴田:そうです。僕の持ち物はせいぜい社長室という箱くらい。社員にとっては、「指示を出す人」ではなく、「壁打ち相手」くらいだと思います。いいボールを返して学びを深める提供者でありたいですね。ウェルビーイングにつながる組織づくりとしては、各チームが関係性づくりだけを目的にした合宿に行っています。

 2日間くらいかけて、メンバーそれぞれのバックグラウンドや将来のキャリアの希望を出し合うんです。互いに開示し合うことで「心理的安全性」が生まれて、仮面を取った素の状態で仕事ができるようになる。

 僕もこれまで色々な集団に属してきましたが、信頼できる仲間と、安全性のある中で、大きな目標に向かって全力疾走するのはこんなに楽しいんだな、こんなにも成果が出やすいんだな、といった充実感があります。なかなか説明しづらいのですが……。

石川:逆に、悩みはないんですか。

柴田:唯一の悩みは、僕がしんどいことです(笑)。みんなが自由に動きたがるので、会社が壊れないように調整するのは僕の役割になります。昨日も120人分のビジョンシートを開いて、思わず閉じたくなったのが本音です(笑)。

石川:壮大なる調整役ですね。

柴田:その苦労も年々減ってきてはいますけれどね。社員の経験が増えるに従って、組織の捉え方の視座も高められていくので。

中竹:これからの維持・拡大・成長をいかに遂げていくかというのも楽しみですね。

柴田:今は正社員が120人ですが、この春にさらに30人、新卒が入ってきます。「組織の壁に直面するのは、150人規模になった時」とよくいわれるので、ここからがまた勝負かなと思っています。

中竹:驚きの事例紹介となりましたが、まだまだ続きます。次は、12年かけて「日本一働きたい会社」(リンクアンドモチベーション「ベストモチベーションカンパニーアワード2017」第1位)に選出されたLIFULLのCPOの羽田さん、お願いします。

「日本一働きたい会社を目指そう」

LIFULL CPO(チーフ・ピープル・オフィサー)の羽田幸広氏(以下、羽田):LIFULLは、「全世界75億人の人生や暮らしを幸せに満たしていこう」という理念で色々な事業をやっていますが、基幹はLIFULL HOME'Sという住宅情報サービスです。

 会社規模はグループ全体で1300人くらい、特に力を入れているのが社員発の新規事業提案制度です。この提案制度を活用して、年100~150件ほどの提案が上がって、常時10件くらいの新規事業が動いています。

 ほかにも、クリエイターが業務時間の10%を新しい技術開発に充てられる「クリエイターの日」という制度や、労働時間の1%(年間2日)を社外のボランティア活動などに充てられて、その活動に必要な費用を会社が補助する「One P's」という仕組みもあります。この費用には、前年度の税引き後利益の1%を使っています。またママ社員たちが自分たちの経験を踏まえて、育休から復帰する社員のサポートをするワーキンググループなど、有志の社員による自発的な全社横断活動も活発です。

 LIFULLでは経営陣も投資先や提携先として海外企業へ積極的にアプローチしたり、地方創生の事業を複数立ち上げたり、経営理念を実現するために、新しいことにどんどん挑戦しています。社員は社員で新しい事業をやりたければどんどんと立ち上げる。ティール組織ではありませんが、自己実現に向けて挑戦しやすい自由な雰囲気はあると思います。

LIFULL CPO(チーフ・ピープル・オフィサー)の羽田幸広氏(写真左)
LIFULL CPO(チーフ・ピープル・オフィサー)の羽田幸広氏(写真左)

中竹:日本一働きたい会社になろうという指針がもともとあって、そこに至ったんですか。

羽田:ありました。2008年に「日本一働きたい会社を目指そう」と宣言して、それに向けてやるべきことを実践してきました。途中でビジネスモデルを変更して、業績が落ち込んだりするなど、色々なことはありつつも、少しずつ今の形ができあがってきました。

中竹:社員発の事業提案が多いというのは、柴田さんの会社と近いですね。しかし文化としては全く違うというのが面白い。あえてネットプロテクションズとの違いを語っていただくとすれば何でしょう。

羽田:社長がよく言うのは、「平時はボトムアップ、有事はトップダウン」。まずは経営理念の実現に向けて、社長が大きな方向性を示し、やり方は基本的に社員に任せます。一方で、大きな変革をすべき時などには、社長が積極的に介入して指揮を執ることが多いですね。

中竹:リーダーシップスタイルの違いですね。

次ページ 見てみたい!お祭りのような全社員ランチ