給与まで!社長と同じ情報を社員で共有

中竹:対話が多い組織は生産性が高いともいわれます。では、「ティール組織」として注目されるネットプロテクションズの柴田さんの組織づくりについても聞いてみましょう。

ネットプロテクションズ代表取締役の柴田紳氏(以下、柴田):はい。当社の創業は2000年で、私はもともと買収した投資会社の人間として2001年に入社しました。

 当時の私は26歳で、不満を抱えた年上の社員ばかり20人くらいいて、完全にアウェーの状況からスタートしました。「後払い決済」という、それまで世の中になかったサービスを始める時も、理解を得られずに苦労しました。

 ガラス張りの会議室の中にいたら、向こう側にいる社員が全員こっちを見て笑っていたり、私が取材を受けた新聞記事を掲示板に貼っておくと、翌朝には目に画びょうが刺してあったり(笑)……ということもありました。

中竹:それは完全なるいじめですね。私もラグビー監督時代は、結果を出すまでかなりやられましたが。

石川:選手に「死ね」とつぶやかれたんでしたっけ。

中竹:はい。しかし、そう言われないまでも、画びょうで刺されるのは近い状況でしょう。

柴田:そんなわけで、いい組織への憧れを強く持っていました。加えて、投資会社の前にいた総合商社では、仕事のないまま3年間放置されていた経験もあって、「未来ある若者にこんな体験をさせるなんて」と、組織に対する怒りを増幅させていた時期もあったんです。自分が経営する立場になったら、逆の組織をつくっていきたいという思いは、ずっと根底にありました。

中竹:そして今、ネットプロテクションズさんは急成長を遂げていますよね。具体的にどんな組織になっているのでしょう。

ネットプロテクションズ代表取締役の柴田紳氏
ネットプロテクションズ代表取締役の柴田紳氏

柴田:従業員数は380人くらいで、そのうち約120人が正社員です。最近どんどん増えているのは業務委託の方で、200人くらい。残りは派遣社員の方です。

 うちはユニークな組織文化で、他文化の染め直しを要しないという意味で、正社員のうち8割は新卒です。高学歴でリーダー志向の強い人材が中心で、本質的な議論を好み、誠実で、自ら責任を負いたがるようなタイプの社員ばかり120人います。

一同:すごい……。

柴田:落ちたら自分が拾いに行き、周囲と協働できる。これがリーダーシップだろうと理解しています。うちの社員は全員優秀なリーダーです。ただし、上から指示をしようとすると、「なぜそれが今、必要なんですか」という問いがいちいち返ってきて、すんなり飲み込んではくれません。

 という集団なので、普通のピラミッド構造の指示系統だと、業務を回していけません。そこで、社長が持っている情報はすべて社員に開示して、権限も委譲しています。新卒採用や予算策定、研修の企画、海外進出なども、会社からの指示ではなく、社員の間のワーキンググループで運営してもらっています。マネジャーも意味がないので廃止して、代わりにチーム内の調整役を「カタリスト」と呼んでいます。

小林:「持っている情報が社長と一緒」ということは、社員はみんな互いの給料を知っているんですか。

柴田:そうです。年に2回、将来進むキャリアや異動希望を書く「ビジョンシート」を出してもらうんですが、それも全社に共有されます。かつ、全員が「希望通りに異動できて当たり前」と思っています。実際、いつ・どこに異動するのか、どのプロジェクトに参画するのかも、社員が自分で選択できる状態です。

小林:それで売り上げと利益をつくれているのがすごいですね。

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