2000年以前に創業した古参ネット企業の2020年を紹介した前回に引き続き、今回はそれ以降に創業された新興企業の今年の動向を紹介していこう。今回登場する企業は以下の通りである。
・バイトダンス
・快手
・美団点評
・拼多多
・ビリビリ動画

バイトダンス(字節跳動)

 TikTokを手掛けるバイトダンスにとっては、何といってもトランプ米大統領の圧力にさらされ続けた1年だった。大統領選が迫る8月になって米国事業売却を命令されたものの、浮かんでは消える売却先候補企業との交渉はいずれも難航、TikTokも政権に対して訴訟を起こし一部で勝訴するなど今後は不透明なままだ。とはいえアプリ自体の人気は相変わらずで、11月の月間モバイルアプリの世界売り上げランキングにおいてもTikTokと国内版の抖音(ドウイン)をあわせて前年同期比3.7倍の128億円で1位になっている。

 国内に目を向けると、1月末にはコロナによって劇場公開が立ち消えになった春節映画「囧媽(Lost in Russia)」を6.3億元(約100億円)払って買い取り、自社サイトで配信したことが話題になった。また盛り上がるライブコマースへの対応策として4月にスマホブランド「Smartisan」などを手掛けたシリアルアントレプレナー(連続起業家)羅永浩を起用して派手に参入したが、通年で見ると競合他社には見劣りする状況だ。1万人以上増員するとしている教育分野をはじめいくつかの新事業発表はあったが、まだ具体的な成果は見えていない。

<筆者の見解>
 米ディズニーで独自動画ストリーミングサービスDisney+のローンチを成功させるなど豊富な実績を持つケビン・メイヤーをCOOとして引き抜いたものの、トランプ米大統領との抗争の余波か100日余りで去られてしまっている。トランプが大統領選に敗れたことで最悪の事態は免れたかもしれないが、バイデン率いる民主党政権になったところで対中強硬論自体は収まらないだろうというのが大方の意見で、国際的な拡大には今後も困難が予想されるだろう。

 国内事業に関して広告業界に身を置く筆者の立場からすると、11月にいままで百度(バイドゥ)の天下だった検索連動広告へ参入したことに注目している。自社が提供するアプリ群の中に広告を掲出できるというもので、世界的に検索エンジンからアプリ内検索への流れが続くにもかかわらず、この分野の国内プレーヤーは非常に少なかった。

 またバイトダンスは数社の買収によってペイメントや金融分野のライセンスを入手しており、11月18日になってDOUPAYという商標を申請している。現状ではWeChat PayとAlipayがほぼこの分野を独占しており、オンラインで支払いが発生する場合はそれらを利用する必要がある。ただ競争が苛烈な中国では、仮にテンセントやアリババとの間でトラブルが起きた場合、即座に利用を禁止されることも十分に想定される。そうしたリスクを排除するためにも、事業単体の規模は小さくとも自社が完全にコントロールできるソリューションを持っておくのは重要だろう。ちなみにライバルの快手も12月に既にライセンスを持っている企業を買収する形でペイメントの分野に参入している。その一方前回アリババの項目で取り上げたように、この分野は当局が非常に敏感になっている。今後こうした新規参入者に対してもすぐに制限がかけられるのか、注目していきたい。

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