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 オリンピックイヤーの商機を目前に、渋谷、新宿、池袋の3大ターミナルが再開発にしのぎを削っている。東急グループによる渋谷が目立っている印象だったが、池袋に久しぶりに降り立ったら、雰囲気が激変していた。

「Hareza(ハレザ)池袋」。劇場、シネマコンプレックス、そしてオフィスビルも兼ね備えた空間が、池袋駅至近に生まれた。(写真は特記なきものは豊島区提供)

 超高層タワーの林立で垂直都市化が進む渋谷とは対照的に、こちらは「面」を大胆に再開発し、回遊性を各段に高めた。目玉は駅前一等地に2フロアを使って展開する「公共トイレ」という。

 ユニークな再開発の音頭を取るのは、今年6選を果たした豊島区長の高野之夫氏(81)だ。

高野之夫(たかの・ゆきお)東京都豊島区長
1937年、東京都豊島区生まれ。生家は池袋駅西口にあった古書店「高野書店」。立教中学校、高等学校を経て、60年に立教大学経済学部を卒業し、家業を継ぐ。豊島区議会議員、東京都議会議員を経て、99年に豊島区長に当選。豊島区は2014年に「消滅可能性都市」と名指しされたが、その後人口は復活。15年に区役所とタワーマンションを融合させた新区庁舎「としまエコミューゼタウン」が完成。2020年7月には、区庁舎跡地の再開発「Hareza(ハレザ)池袋」がグランドオープン予定。現在6期目。(撮影:編集部)

「暗い、怖い、汚い」池袋に宝塚歌劇団を呼ぶ

池袋東口の区庁舎跡地再開発「Hareza(ハレザ)池袋」では、メインホールである「東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)」が完成して、こけら落とし公演を開催。それがなんと、宝塚歌劇団星組によるタカラヅカ初演の「ロックオペラ モーツァルト」でした。「え、池袋にタカラヅカ!?」と、世間の耳目を集めています。

東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)

高野之夫豊島区長、以下、高野:「え、池袋にタカラヅカ!?」は、数年前に私が宝塚歌劇団にお願いに行った際に、まさに先方からいただいた言葉です。

さすがにムッとされたのでは。

高野:いえ、池袋の駅前で生まれ育ち、豊島区をこよなく愛する私ですが、その反応はいたしかたないことだと思いました。なにせ池袋のイメージは長く、「暗い、怖い、汚い」でしたから。

豊島区の中心、池袋駅は1日の乗降客数が268万人で、都内でも1、2を争う巨大ターミナル。東武、西武の百貨店やパルコ、ルミネなど商業集積があり、各種の「住みたい街ランキング」でも、常に名前が上位に出てきます。それでも池袋は、街としてのブランド力がずっと弱かったように思います。

高野:この街は、戦後の闇市の雰囲気をずっとひきずっていたんですね。1980年代のバブルでも、スポットライトからは外れていました。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック(東京2020)を機にした東京の再開発でも、超高層タワーが林立する渋谷の方が、なにかと話題に上ることが多い。ところがここに来て、池袋の攻めの姿勢が際立ってきました。