北へ向かう移民の列

 IHCAFEがホンジュラスのコーヒー栽培農家900人にアンケートを行ったところ、移民の移動が盛んだった5月、6月、7月の3カ月間に少なくとも家族の1人が米国に向かったという回答が5.4%あった。

 これを同国のコーヒー栽培セクター全体に適用すると、この3カ月だけでコーヒー栽培農家からの移民は約6000人になる。米国の国境管理データをもとに計算すれば、同時期に米・メキシコ国境を越えようとしたホンジュラス出身の不法移民の6%に相当する。

 IHCAFEによるアンケートは家族全体での移民の数を把握していないため、実際の数はもっと多いかもしれない。

破滅をもたらした伝染病

 中米地域に広がる貧しい山間部地域では、何世紀にもわたり、手摘みによるコーヒー生産が生計の手段となってきた。他のたいていの作物を育てるには、あまりにも傾斜が急で土壌が痩せているか、森林に覆われているからだ。世界のアラビカ種の約15%はこの地域で生産されている。世界のコーヒー愛好家の多くが選ぶのは、香りの強いロブスタ種よりも、柔らかな風味のあるアラビカ種である。

 だが業界データを見ると、コーヒーの国際価格が下落する中で農家が損失を重ねていったことで、2017年10月以降の4年間で同地域のコーヒー生産量は10%低下している。グローバルな需要・価格が堅調であるにもかかわらず、現在の2021/22年シーズンは、さらに3%の減産になると予想されている。

 前出のマリアさんの兄で、やはりエル・ローレルでコーヒー栽培を営むエウゲニオ・ボニージャさん(56)は、今シーズンは生産量が半分近くに減ってしまったと話す。主な原因は「ロヤ」だ。

 「樹の状態が良くなければ、コーヒーの価格が回復しても意味がない」とエウゲニオさんは嘆く。

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