ベーシックインカムも早期の議論が不可欠

 2001年4月に登場した小泉純一郎首相のキャッチフレーズは、「構造改革なくして景気回復なし」というものであった。それから20年、改革された構造と改革できなかった構造があるが、この残った問題を解決しようとの発想が、菅義偉首相の「地銀再編と中小企業改革」につながっていると考えると、その目的を理解しやすい。

 同時に、当時、経済財政政策担当大臣と金融担当大臣、その後に総務大臣を務めた竹中平蔵氏が「ベーシックインカム」論を提唱した。また、これに類似したものとして「ベーシックサービス」を主張する学者も出てきた。両者の違いは、①提供するものが現金かサービスか、②中身を問わない全体の提供かサービスの中身を吟味するか、の違いである。後者の方が弱者に寄り添うとの見方があるが、それは提供するサービス内容次第である。

 この問題を本稿で取り上げる理由は、今回のコロナ禍で急増した貸し出しを解消する道筋をつけ間違うと、もしくは中小企業改革で退出させられる企業が増えると、ベーシックインカムの必要性も増すと考えられるからである。過剰債務処理問題とベーシックインカムの議論は連関すると考えられる。

 昨年第4四半期からマイナスを続けているGDPギャップは、2014年の消費増税後の3四半期連続、および2015年第3四半期からの6四半期マイナスを続けたときと違ってマイナス幅が大きい上、第3四半期の戻りも意外と小さかった。雰囲気的には第4四半期の戻りも小さい可能性を否定できない。また、来年2月が期限の雇用調整助成金で維持された雇用者も多いことを考えると、政策を間違えば半年後には大量失業者の発生という悪夢もあり得るからだ。

 今はまだ、第3次補正予算の発表と21年度予算を待つ段階なので、ベーシックインカムの議論もこの結果を待つ必要がある。しかし、財源問題で紛糾しそうな現実と、日本における法案通過のスピードを考えると、筆者も前稿で5年の猶予とした過剰債務処理問題の期限までの法整備のためには、待ったなしでベーシックインカム議論を進める必要があるだろう。

 その際、今回の過剰債務処理問題の流れでの留意点は2つだ。1つは、中小企業における経営者の保証状況を考えて、企業の退出および合併が家族経営規模の零細企業を含めて個人の生活に影響すること。2つ目は、中小企業で職を失うであろう人々まで考えてベーシックインカムを「社会的弱者にとって必要なサービスを提供するに足る制度」とすることである。

構造改革の前提となる景気回復の方法はあるか

 コロナ第3波が全国を覆い、特に大阪と札幌で感染が拡大している。ただ、都道府県別の感染者数を見ると、GoToトラベルが影響していると言い切るのは難しい印象だ。また、都道府県というよりは特定の市、しかもある特定の地区で広がっているとの見方もあるので、急ぎその原因を調査すべきだろう。

 地銀再編と中小企業改革の1つの柱である過剰債務処理の問題は、コロナ禍が収束し、その後の景気回復を前提としなければ進めるべきではない。金融・経済政策は、悪化した景気を刺激するか、または過熱した景気を冷ますことはできるものの、景気変動の根源が定まらない限り力を発揮できない。

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