本連載の1回目「猶予期間は5年、新型コロナで再燃する不良債権問題」には、多くの方々からご意見を賜った。そこでいただいた意見も含めて第2回を書いていきたい。また、この間、新型コロナの第3波が激化し、これも加味した発想も必要となった。

 まず、日本経済は、コロナ禍が来る前から消費増税などの影響で景気が悪化していた上、長年のゼロ金利政策で収益力を失った金融機関と、政府の特別対応で現状維持が最適解となった企業という、外的ショックに弱い特殊な環境にあったことを忘れてはならないだろう。

 地銀再編や中小企業改革は喫緊の課題ながら、その前に、コロナ対応で膨らんだ、さらなる景気悪化を招きかねない過剰債務問題を解消していく必要がある。しかも、第3波への対応を考えると、緊急対応融資は一段と増える可能性が出てきている。

(写真:PIXTA)
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コロナ債務には政策としての処理方針を

 今回のコロナ禍の影響への対応が難しいのは、過去の不良債権問題のような景気循環的な要素とは異なり、通常のリスク管理手法では想定し切れなかった感染症による市場変動リスクが加わったものだからである。

 日本の地価比率(不動産総額の対GDP比)は、19世紀終わり頃から2倍台で推移していたが、1984年からの急上昇で90年に5倍台半ばとピークを打った後、バブル崩壊で低下に転じ、2004年からは再び2倍台で横ばいになっている。

 「バブル崩壊で不動産価格が1000兆円吹き飛んだ」という話も、バブルで1000兆円も急騰した反動にすぎず、問題に直面していた時期の関係者の苦労を除けば、政府および民間の両主体の誤った経済活動が地価変動を増幅させた結果と考えても間違いとは言えないだろう。

 一方、今回のコロナ禍では、政府の迅速な対応によって急場をしのぐために積み上がった債務を減らすことを、企業はためらわざるを得ない。コロナ後の姿が不明確なため、不確実性が消えるまで待つことが正しい行動となる。しかも、日本の法制度は米国のような柔軟な対応ができる状況にはない。これらの問題を考えるため、有志で「バランスシート問題研究会」を立ち上げ、9月には中間報告を行い、商事法務1179号にも掲載された。

 ただし、「言うはやすく行うは難し」で、簡単に世の中が変わるわけでもないだろう。従って、猶予期間である5年間をぎりぎりまで有効に使うのか、早めの処理に動くのか、これこそ政治の強いリーダーシップが必要で、その判断を安易に民間に帰するような発想を持ってはならないと感じる。

 しかも、金融界のリスク管理の専門家も「特異な事態」と言えば関東大震災級の地震の発生など、経験則による想定にとどまっていたと思われる。全く予期しなかったコロナ禍の発生とその長期化は、事態によっては今後一段と問題が悪化することも否定できず、リスク管理分析からはどの段階でのどのような行動が損失額をミニマイズするかを予想できない。リスク管理モデルの限界に直面したのである。

 政府は、第3次補正予算など足元の短期的救済パッケージのみならず、将来を見据えた長期的救済パッケージを推進する必要がある。そこには債務解消の道筋をサポートする施策の提供も期待されるところだ。

 何もかもが、コロナ禍でこれまでとは違う常識で考えることが必要となっている。

続きを読む 2/3 ベーシックインカムも早期の議論が不可欠

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