そして、キユーピーが発売しているサプリメント「飲む人のための『よいとき』」の中身は、酢酸菌酵素、つまりアルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素なのです。確かに、商品パッケージの背面にある「原材料名」の欄を見ると、しっかり「アルコール脱水素酵素」「アルデヒド脱水素酵素」と書いてあります。

何という発想の転換。これまでウコンや肝臓水解物など、「肝臓がんばれ成分」を主体にした健康食品は見てきましたが、「外から2つの酵素を足す」というものは初。実に斬新です。
そもそも、奥山さんが酢酸菌酵素を使ったサプリを開発するきっかけは、キユーピーで酢を製造するプロセスから閃ひらめいたのだとか。「マヨネーズを作る際、材料としてお酢を使います。キユーピーでは50年以上前からマヨネーズに使用するお酢を自社で製造しています。アルコールに酢酸菌を加えるとお酢になるのを見ているうち、この酢酸菌の力を応用できないかと思ったのがきっかけです」(奥山さん)
血中アルコール濃度が3割抑えられた
奥山さんによると、酢酸菌の表面にアルコール脱水素酵素と、アルデヒド脱水素酵素が存在していて、酢酸菌とアルコールが接触することで、アルコールが酢酸に変化するそうだ。実際、目に見えない分子レベルで調べると、酢酸菌の表面にアルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素が並んで存在していて、1秒足らずの間にアルコールを酢酸に変えているのがよく分かるのだそうです。
「酢酸菌が持つ2つの酵素のうち、特に活性が強いのがアルデヒド脱水素酵素です。アルコールを酢酸に変える微生物はほかにもいますが、酢酸菌の力は断トツです。酢酸菌は自分の周りに抗菌性の高い酢酸を作ることで自分のテリトリーを作ってほかの微生物から身を守り、何千年もの間、生き残ってきたのです」(奥山さん)。
ここまでの説明で、酢酸菌酵素がアルコールを酢酸に変える能力が高いことはよく分かりました。では、実際の効果はどうでしょうか。奥山さんは女子栄養大学との共同研究で、日常的に飲酒習慣のある40~60代の健康な成人男性7人を対象にした試験を行いました。その結果、同じ対象者の酢酸菌酵素を摂取しない状態に比べ、摂取した場合は体内の血中アルコール濃度が有意に低下し、30%程度抑えられるという結果が得られました。
では、これを「いつ飲めば」、酢酸菌酵素の恩恵をより多く享受できる可能性が高いのでしょうか。「要は、胃に食物が停滞しやすい条件で、アルコールと酢酸菌酵素がよく混ざるようにするとよいと考えられます」と奥山さん。胃に食べ物、特に油分があったほうがサプリメントの滞留時間が長くなり、アルコールと接する時間が長くなるわけです。
奥山さんの研究データから、酢酸菌酵素を飲んでから3時間くらい効果が続くと考えられています。そのため、長い飲み会のときなどは、最初の乾杯時と、後半戦の2回にわたって飲むのも手かもしれません。
漢方薬、そして酢酸菌酵素の助けも借りながら、この年末年始の宴会シーズンを乗り切りましょう!
お酒が好きな人は、「酒は百薬の長」という言葉の通りに、ほどほどに飲めば健康にいいと思っているかもしれません。しかし、最近では「少量でも病気のリスクが上がる」という研究が出てきて、専門家の間で議論されています。「そんなー!もうお酒は飲めないの?」と心配になったみなさん、大丈夫です!健康に与えるリスクを最小限に抑えつつ、お酒を楽しむ「最高の飲み方」をお教えします!
エッセイスト・酒ジャーナリスト

1966年東京都練馬区生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。ラジオレポーター、女性週刊誌の記者を経て現職に至る。全国の日本酒蔵、本格焼酎・泡盛蔵を巡り、各メディアにコラム、コメントを寄せる。「酒と料理のペアリング」を核に、講演、セミナー活動、酒肴のレシピ提案を行う。2015年に一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを設立。国内外にて世界に通用する酒のプロ、サケ・エキスパートの育成に励み、各地で日本酒イベントをプロデュースする。著書に『酒好き医師が教える もっと! 最高の飲み方』など多数。
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