「五苓散は、慢性的な頭痛にも処方されます。むくみ、口渇、下痢、嘔吐(おうと)、排尿困難といった“水毒”に効果があります。これらの症状は、『口は渇いているのに、足はむくんでいる』といった、体内における水の偏在からくるものです。五苓散は体内の水の流れを整え、水分の分布を均等にする効果があるのです」(星野さん)。

五苓散(ゴレイサン)を構成する5つの生薬。北里大学 東洋医学総合研究所所蔵の生薬
五苓散(ゴレイサン)を構成する5つの生薬。北里大学 東洋医学総合研究所所蔵の生薬

 むくみ、口渇、下痢、嘔吐、排尿困難……まさに二日酔いの朝にありがちな症状ですよね。私は五苓散を使っていると、特にむくみに効果があると感じています。

 星野さんは、「五苓散は体質をあまり選ばず、多くの人に飲んでいただける漢方薬です。二日酔いでも、水毒が原因となる軽めの症状のときに適した漢方薬です」と話します。

黄連解毒湯は“解毒剤”として働く

 「五苓散と並んで、二日酔い・悪酔い対策に使われる黄連解毒湯は、酒毒を消す、つまり解毒剤的な役割をしてくれます。黄連解毒湯は、熱による炎症を抑えるのに用いられる薬です。一般的には解熱、のぼせ、赤ら顔、アトピー性皮膚炎などの改善のために処方されます。胃腸などの消化器系の炎症を抑えますので、二日酔いによる胃の不快感、それに頭痛などの緩和にも役立ちます。飲み過ぎ全般に効果的です」(星野さん)。

 星野さんによると、黄連解毒湯は、お酒を飲んで赤くなる、体が熱くなるタイプの方に向いているとか。

 「黄連解毒湯は、『体の熱を冷ます』『炎症を鎮める』効果が強いので、寒がり、冷え性の方には向きません。また、人によっては微熱が出たり、慢性的な倦怠感(けんたいかん)といった副作用が出たりすることもあります。問題が起こることは多くはありませんが、医師に相談することをお勧めします」(星野さん)

「酢酸菌酵素」というニューフェース現る

 さて、飲む前に飲む「助っ人」として、数年前からサプリメントが販売されている、「酢酸菌酵素」はご存じでしょうか。私も最初に聞いたときは、何のことかさっぱり分からなかったのですが、サプリを商品化したキユーピーの奥山さんに聞きました。

「お酢の主原料はアルコールです。バルサミコ酢がワインからつくられるように、お酢はお酒からつくられるのです。そして、アルコールからお酢の成分である酢酸を作る際に菌の力を借りるのですが、その菌こそが酢酸菌です。酢酸菌の周りに酢酸菌酵素が付いていて、これがアルコールを酢酸に変える働きがあるのですよ」(奥山さん)。

 アルコールが酢酸に変わるというのは、体内でアルコールが分解されるプロセスと実は同じなのです。肝臓でアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに分解され、さらにアルデヒド脱水素酵素により酢酸に分解されます。

体内に入ったアルコールは、アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解される。その後、「アルデヒド脱水素酵素」により、無毒な酢酸になる。
体内に入ったアルコールは、アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに分解される。その後、「アルデヒド脱水素酵素」により、無毒な酢酸になる。

 「先ほど酢酸菌酵素が、アルコールを酢酸に変えるとお話ししましたが、この酢酸菌酵素というのは、アルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素そのものなのです。アルコールから酢を作るときも、体内でアルコールを分解するのも、実は同じ仕組みなのです」(奥山さん)。

 何と、体内でアルコールを分解するプロセスと、お酢を製造するプロセスが同じだったとは驚きです。

次ページ 血中アルコール濃度が3割抑えられた