法制度ない日本から離れる優秀な人材を目の当たりに

日本では同性同士の婚姻は認められていませんし、差別禁止法もありません。こうした状況は、経営側から見たときに企業にとってどのような影響を及ぼしていると見ているのでしょうか。
貴田氏:EY Japanでも、近年も数人の当事者である従業員が台湾やカナダ、米国のEY拠点に移ってしまっています。とても優秀な人材なのですが、将来的に子供をもうけたい、結婚したいと考えていても法律が整備されていない日本では将来の人生設計をポジティブに考えられない不安があるのです。EYだけでも、日本から海外への人材流出の課題を感じています。
私自身、パートナーと一緒に2016年に日本に来ましたが、海外で法的に認められた婚姻をしていても、同性の場合は配偶者ビザが支給されないため、私のパートナーはまず、どのように合法的に滞在できるかというところから考えなければなりませんでした。
日本は私にとっては母国ですし、夫も日本が大好きで永住を望んでいますが、日本で住宅を買って資産を蓄えるという選択に踏み切ることがいまだにできません。もし夫が職を失った場合にはすぐに国外退去をしなければならないからです。
私たち二人ですら日本の経済活動にフルで参加できていないのです。同じようなカップルをほかに何組も知っています。
日本で働くことを考えたときに、同性婚が法制度化されていないことが障害を生んでいるのですね。
貴田氏:3カ月ほど前、香港の金融業界で働いているLGBT+当事者の知人が「今の状況を鑑みて、他のアジア太平洋地域で働きたい」と、国を越えた転職を検討していました。
アジア太平洋地域の金融センターと言えば香港以外では日本、シンガポール、オーストラリアが候補になります。彼は「自分は日本が一番好きだけれども、日本への移住には踏み切れない」と言っていました。LGBT+当事者の権利が法律で保障されていないために、経済で競合する他国と比べて日本が働く場所として良い国だと見られていないのです。このことは残念です。
EY全体で見ても、英国やオーストラリアなどのほうがマイノリティ-には赴任しやすいといわれます。日本のような国は海外の高度人材の招致についても難しさがあるのです。また、無視できないのは本人が当事者でなくても扶養家族でLGBT+当事者がいる場合です。彼らも法整備が進んでいない日本へは赴任できないと考えています。
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