今年6月、地図情報サービスを提供するスタートアップ企業の米マップボックスの経営陣は、従業員にショッキングな知らせを伝えた。同社は1億5000万ドル(約173億円)の資金調達のチャンスを逃したが、その原因が労働組合結成の動きにあったというのだ。

 この知らせはズーム上での全員参加のミーティングで伝えられたが、この段階ですでに、ソフトバンクが支援するマップボックスで労組加入資格を持つ米従業員のうち約3分の2が、労組結成を希望するという意志を表明する書面にサインしていた。同社以外にも、シリコンバレーでは労組結成の動きが活発になっている。

 だがミーティングを機に流れは変わった、と同社の現従業員・元従業員各1人は語る。同社経営陣が資金調達の失敗を明らかにし、従業員が労組を結成するなら、そうしたトラブルが繰り返されるのではないかという懸念を表明したからだ。直近の非公開の資金調達ラウンドではマップボックスの評価額は10億ドル以上とされており、複数のいわゆる特別買収目的会社と株式上場に向けた協議を進めていた。同社の従業員は8月、投票により労組結成を否決した。

今年6月、地図情報サービスを提供するスタートアップ企業の米マップボックスの経営陣は、従業員にショッキングな知らせを伝えた。写真はニューヨーク・ブルックリンに置かれたプラカード。10月25日撮影(2021年 ロイター/Brendan McDermid)
今年6月、地図情報サービスを提供するスタートアップ企業の米マップボックスの経営陣は、従業員にショッキングな知らせを伝えた。写真はニューヨーク・ブルックリンに置かれたプラカード。10月25日撮影(2021年 ロイター/Brendan McDermid)

 マップボックスの対応からは、労働組合が労働者の囲い込みを模索する中で、テクノロジー企業が抵抗を試みる手法が垣間見えてくる。

 ここ数年、全米通信労働組合(CWA)と、事務専門職従業員国際労働組合(OPEIU)はシリコンバレーにおけるキャンペーンを開始し、キックスターターやグリッチのようなスタートアップの従業員の組織化を推進している。またCWAはグーグルの親会社アルファベットでも労働組合を結成した。これは団体交渉権を持たない、いわゆる「少数派組合」だ。

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