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9割弱の議席を確保。11月24日に実施された香港区議会選挙は民主派の地滑り的な圧勝に終わった。だが、投票内容を分析すると民主派と親中派に議席数ほどの差は見られないことがわかる。長引く抗議活動で香港の「分断」ばかりが強調されがちだが、実はこれまで排除されてきたエスニックマイノリティーを「融和」する役割も果たしていた。香港中文大に在籍する若手日本人研究者、石井大智氏による現地緊急リポート第4弾。

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 11月24日に実施された香港の区議会選挙で、民主派が圧倒的な勝利をおさめた。区議会選挙で争われた452議席のうち建制派(親中派)の獲得議席はわずか59。民主派など非建制派が獲得した議席は393議席で全体の9割弱に及んだ。

投票率は7割を超えた。投票所には500メートル以上の長蛇の列ができた(写真:的野 弘路)

親中派にとっては「民意」が反映されなかった

 しかし実は、建制派は得票数の4割を獲得している。小選挙区のもと建制派は多くの死票を抱えることとなり、結果として票数の割合ほどの議席数を獲得できなかったのである。香港や日本などでは「香港の区議会選挙は民意が反映された」と報道されることが多いが、一部の親中派から「得票数と議席数が乖離(かいり)しており、民意を反映できていない」という主張も出ている。前回の香港の区議会選挙では民主派は4割の票数に対し3割程度の議席しか得られなかった。それでも4割の票数で1割強しか議席を得られなかった今回の建制派に比べれば死票の割合は少なかったはずだ。

 香港の区議会選挙では民主派、建制派ともに候補者を一本化していない選挙区が多いが、民主派なら所属政党よりも「泛民区選聯盟」に推薦された候補者に投票される傾向がある。したがって香港の区議会選挙の構図は事実上の二大政党制に近い。今回の選挙区では両者が接戦だったところが多く、なおさら死票が出やすかった。例えば石硤尾選挙区では民主派候補が建制派候補に10票差で勝利。逆に屏山北選挙区では現役の建制派候補が民主派候補にわずか2票差で勝利している。

 私は前回の記事で香港の区議会選挙は世論調査の役割も果たすと書いた。世論調査として見れば、相対的に非建制派が建制派を上回っていることは間違いないが、議席数ほどの圧倒的な差があったわけではない。一致しない世論の中、香港の分断がこれからも続いていくであろうことを示唆している。