1リットル当たり170円目前まで上昇しているガソリン価格。価格高騰が家計や企業に与える悪影響を緩和すべく、政府は11月19日に決定した新たな経済対策に、小売価格の上昇を抑える「時限的・緊急避難措置」を盛り込んだ。
具体的には、レギュラーガソリンの小売価格の全国平均が170円を超えた場合、石油元売り会社に対して補助金を出すというもの。補助金はガソリンの場合1リットル当たり5円程度となる予定で、期間は12月下旬から2022年3月までになるという。
元売りへの補助制度という、前例のない対応には「ガソリンや灯油の需要が高まる冬場に間に合わせるべく、最も迅速に価格上昇を抑える手法を考える必要があった」(経済産業省関係者)との理由も影響している。だが、ガソリン流通の川上に位置する元売り業者が設定する卸売価格が引き下げられても、最終的に小売価格を決めるのは全国の小売店、ガソリンスタンドだ。彼らが小売価格に値下げ分をきちんと反映するかは分からない。
川下にいる消費者の負担軽減に直接つながる手法を導入すべきだとの声も強い。中でも、専門家や一部の政党の間ではガソリン価格が上昇し始めた秋口から「トリガー条項」を適用すべきだとの声が高まっていた。

トリガー条項とは何か。理解するにはガソリンにかかる税金の仕組みを知っておく必要がある。ガソリンには「消費税」「石油税」のほか、国税の「揮発油税」、地方税の「地方揮発油税」がかけられている。この2つを合わせてガソリン税と呼んでいる。もともとは道路整備の財源として使われていたが、現在は一般財源に充てられている。税額は1リットル当たり53.8円(揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円)だ。だが、この53.8円のうち25.1円は、財源の不足を理由にしてさらに上乗せされた暫定税率分だ。
トリガー条項は、総務省が発表する小売物価統計調査においてガソリン平均価格が3カ月連続で1リットル当たり160円を超えた場合、この上乗せ税率分の25.1円の課税を翌月から停止するというものだ。停止後に、3カ月連続でガソリン平均価格が1リットル当たり130円を下回った場合に、課税停止は解除される。
そもそもの導入は、09年の衆院選で民主党(当時)が政権公約の一つにガソリン税等の暫定税率廃止を掲げたことにある。その後民主党は政権与党となったものの、財源確保の問題から公約実現を見送らざるを得なくなった。その代わりの燃料価格高騰対策として10年に「所得税法等の一部を改正する法律」を成立させ、そこにトリガー条項を盛り込んだという経緯がある。
しかしこのトリガー条項、成立後は一度も適用されていない。
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