増産が可能なのは米国のシェール?

 欧州大手石油商社トラフィギュラは16日、脱化石燃料の取り組みを進める石油業界が油田開発投資を減らして原油価格上昇圧力になっている点を挙げて、原油市場の需給は非常に引き締まっているとの見方を示した。

 米国などエネルギーの大消費国はOPECプラスに対して、増産ペースの加速を求めているものの、OPECプラス側は北半球の冬の間に新型コロナウイルス感染が再拡大し、需要が冷え込む事態を警戒し、要請に応じていない。

 そこで市場が目を向けつつあるのは、過去10年間、OPEC以外の増産分のほとんどを供給してきた米シェール業界だ。マーキュリア・エナジー・トレーディングのデュナンド最高経営責任者(CEO)は、今週の「ロイター・コモディティー・トレーディング・サミット」で「恐らくさらなる増産が可能な分野が1つ存在する。米国のシェールだ」と述べた。

 IEAは、来年第2・四半期に米国の原油・天然ガス液(NGL)の生産が48万バレル増えて年間の増加幅は110万バレルになると見込む。米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)の試算では、来年第2・四半期の原油・NGL増産幅は22万バレルとより低めだが、年後半に生産が加速するので年間の増加幅は125万バレルとなっている。

 もっとも米シェール業界は、過去の原油価格の高騰局面ほど増産に前向きにはなっていない。投資家と株主からは以前よりも適切な資本配分の要求がずっと厳しくなり、生産能力増強投資をする企業は罰せられ、配当支払いや債務削減に注力する企業を高く評価している。

 ゴールドマン・サックスのコモディティー調査グローバル責任者ジェフリー・カリー氏は、ロイター・コモディティー・トレーディング・サミットで「北海ブレント価格が83ドルで推移していながら、掘削リグの数は大幅に増加していない」と指摘した。

 またシェール企業は人手や機械の不足に苦しんでいるほか、業界がパンデミックによる景気後退からようやく持ち直したとはいえ、増産に動くにはまだ需要動向に不確定要素が多すぎるとの声も聞かれる。

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