パスマティクスによると、自動車メーカーが7月末から10月末にかけて支出したデジタル広告費は約2300万ドルと、2019年の同時期を10%下回った。19年の数字はインスタグラム上の広告を除外している。

 EDOの推計では、自動車メーカーが同期間に費やしたテレビ広告費は5700万ドルで、19年の同時期を5%下回っている。

 EDOのケビン・クリム最高経営責任者(CEO)は「冬季の販売促進はすっかり慣習化しているため、見送るのは難しい。もっとも本格的に行うと、自動車の在庫が切れた場合に消費者の不興を買う。自動車メーカーにとっては『忘れたい12月』だ」と語った。

 フォード・モーターは「F」シリーズのピックアップトラックや一部のスポーツ多目的車(SUV)について、例年と同じキャッチフレーズで年末商戦用の宣伝を始めた。レクサスも例年通り、クリスマスプレゼントとしてのイメージ作りに貢献した「思い出に残る12月」キャンペーンを行う予定だ。

 レクサスのマーケティング担当米バイスプレジデント、ビナイ・シャハニ氏は「劇的に変えてしまうには、このブランドにとってあまりに重要(なキャンペーン)だ。われわれのDNAの一部だ」と説明。広告費は過去数年並みになるとの見通しを示した。

 ただ、シャハニ氏は、この広告が2年前ほどの説得力を持たない可能性を認めた。

 米国最大の自動車小売りチェーン、オートネーションのマーク・キャノン執行バイスプレジデントは、パンデミック前の2019年よりも広告費を減らす計画を示した。メーカーからの値引き提案は「全般に少ないだろう」という。

 テレビ広告枠を売るメディア企業は、打撃を受けるかもしれない。モフェットネイサンソンのアナリスト、マイケル・ネイサンソン氏は先週のリポートで、第4・四半期に全米のテレビ広告の総収入は前年同期比1%減るとの見通しを示した。

 半導体不足に苦しむ自動車メーカーが年末商戦用の広告を減らす可能性があるためだ。今年1年間のテレビ広告費は2019年比で7%減るとみている。

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