経済安全保障が西側諸国の最重要課題の1つとなり、日本企業も専門部署を立ち上げるなど対応を迫られている。共産圏に機微技術が流出しないよう管理していた冷戦時代よりも複雑さは増し、グローバル化が進んだ今はサプライチェーン(供給網)や資金の流れ、サイバー空間などにも目を配らねばならず、必要な人材を揃えて態勢を整えるのは容易ではない。企業の多くは手探り状態で、それを支援するビジネスも立ち上がり始めている。

リスクをいかに予見するか

 今年10月に誕生した岸田文雄政権が担当大臣を新設し、経済安保への取り組みを看板政策に掲げる1年前、三菱電機は経済安全保障統括室を立ち上げた。社内から集めたおよそ10人が、国内のグループ会社に配置された約1000人とネットワークを構築し、日々情報をやり取りしている。

 米国が制裁を課す企業が製品の販売先に含まれてないか、輸出規制が新たに追加された品目はないか、半導体など重要部品のサプライチェーンに脆弱(ぜいじゃく)性はないか、扱う対象は幅広い。

経済安全保障が西側諸国の最重要課題の1つとなり、日本企業も専門部署を立ち上げるなど対応を迫られている。都内のオフィスビルで2020年5月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
経済安全保障が西側諸国の最重要課題の1つとなり、日本企業も専門部署を立ち上げるなど対応を迫られている。都内のオフィスビルで2020年5月撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 空調や昇降機、家電などの民生品だけでなく、防衛装備品や宇宙事業も手がける同社は、これまでも輸出や調達、法務などのリスクをそれぞれの部署で管理してきた。しかし、国際情勢の変化とともに経済安保の概念が拡大し、複合的な対応が必要になった。統括室が各部署と連携しながら経済安保に関連しそうな情報を収集・分析し、いずれリスクとなりうる事象に携わる部署を巻き込むなどして対応に当たっている。

 「起きてからのリスク対処だけでなく、リスク事象が起きるかもしれないことを予見して、その影響をミニマムにするためのリスク制御の機能にもなっている」と、日下部聡常務は説明する。

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