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米大統領選で民主党のジョー・バイデン氏が事実上の勝利宣言をし、不透明感が後退したことを受けて米国株が急上昇している。その流れを引き継ぐ形で日本株も大幅値上がりとなり、11月10日午前の日経平均株価は29年ぶりに2万5000円を突破した。ワクチン開発が進展したという好材料も相まっての動きだが、今後は行き過ぎた株価の修正や反動もあり得る。識者に今後の見通しを聞いた。

(写真:共同通信)

「ワクチン開発受けた盛り上がりは一時的」
■野村証券 若生寿一エクイティ・マーケット・ストラテジスト

 米国政治の不透明要因が薄らぎ、かつ米議会の上院下院の「ねじれ」が濃厚となる点が好感された。投資家のリスク志向が強まったため、日本株市場では買いが先行している。このほど発表された2020年上期の決算で、電子部品や自動車を中心に上方修正が相次いだことも株価の押し上げ要因となっている。「思ったより良い」というサプライズが、米国政治の見通しが明らかになったことと相まって買いの動きを活発化させている。

 9日には米製薬大手ファイザーが新型コロナワクチンの開発が進展したと発表したため、10日の東京市場は株価上昇のスピードがさらに勢いづいた。市場は期待に沸いているが、安全性の確認や供給数の問題等、ワクチン普及に向けての課題は多い。ワクチン開発の材料だけで上値を追い続けるのは限界があり、足元の動きは一時的なものだろう。2021年度の業績上振れ等、地に足のついた材料がないと、日経平均株価が2万5000円前後の水準からさらに上を目指すのは難しいと見ている。

 また、いつもの株高局面と異なる特徴として挙げられるのが、1ドル=103~104円台と円高傾向にあるにもかかわらず、株価が上昇し続けている点だ。これは今回の円高・ドル安が投資家のリスク回避によってもたらされたものではなく、逆にリスク志向が強まり、ドルを売って別の投資先に乗り換える動きが増えたことによってドルが安くなったからである。従って、投資家は今のところ円高をあまり意識していない。だが、今後意識する局面が出てくることも考えられる。

 過去の経緯を振り返ると、民主党政権になると円高になりやすいのは確かだ。ビル・クリントン政権の時は、日米の貿易不均衡が米経済の最優先課題だった。クリントン氏が自ら「日本の貿易黒字削減には円高」と発言するなど、日本に圧力をかけた結果円高が進んだ。バラク・オバマ政権の時はリーマン・ショック後の大規模な量的緩和の結果、円高・ドル安となった、今回のバイデン氏はどうなるか。これは財務長官などの人事がまだ見えていないので何とも言えないが、為替が大きく円高に振れることはないのではないだろうか。足元では製造業等、輸出産業の動きが回復傾向にある。懸念材料は米国内の消費と雇用であるため、ドル安政策に力を入れる必然性があまりない。