9月に発足した菅義偉政権はデジタル化の推進などとともに地銀再編を重要政策の1つに掲げている。菅政権はなぜ地銀再編を軸とする地域経済の改革を急ぐのか。現在は米国を拠点としており日経ビジネス電子版では「酒井吉廣の『2020年米大統領選』」を連載する酒井吉廣氏が、日銀での勤務経験などを基に菅政権が目指す構造改革の意味を読み解く。

「国際競争力を高める」。政府やメディアなどが「成長戦略」などとともに頻繁に使う表現である。だが、それを実現するための構造改革は容易ではない。現在も実現していないからこそ、長く使われ続ける表現になっているのだろう。9月に発足した菅義偉政権は「押印の廃止」や「デジタル化」といった構造改革の実現を目標に掲げている。
いずれも草の根レベルまで浸透してこそ意味がある。そのためには地方の活性化が欠かせない。都市と地方の格差を縮めない限り、国民全体の幸福度の向上を実現することは不可能で、菅政権としては改革に成功したとは言えない。「地方創生」政策が始まって6年、コロナ禍が生み出した新環境の下、地方の問題に長く携わってきた菅首相ならではの抜本策が求められている。
地方経済の基盤は個人や地元企業と地域金融機関との取引にある。地方活性化に際しては地方銀行を中心とする地域金融機関と中小企業の役割が重要になってくる。しかし、地方経済の実態は非常に厳しく、地銀・信用金庫などの地域金融機関や地方の中小企業を改革していくことは容易ではない。菅政権が打ち出している政策の中では、誰もが理解しやすい「携帯電話料金の引き下げ」や「押印の廃止」などに目が行くが、「地銀再編」は「地域企業の生産性向上」と併せて、極めて重要なテーマなのだ。
新型コロナが浮き彫りにした地方の問題
菅首相が就任当初に「地銀再編」を打ち出した背景には、コロナ禍による売り上げ急減をカバーする赤字補填資金として、金融機関全体で約50兆円(うち25兆円は信用保証協会が保証を承諾)を中小企業に与信したことがある。
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6/20ウェビナー開催、「『AIバブル』の落とし穴 ChatGPTリスクとどう向き合う」

近年、ChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)の進化と普及が急速に進み、私たちの生活やビジネスに革新をもたらしています。しかし、注意が必要なリスクも存在します。AIが誤った情報を生成する可能性や倫理的な問題、プライバシーの侵害などが懸念されます。
生成AIの利点をどのように理解し、想定されるリスクに対してどのように対処するか。日経ビジネスは6月20日(火)に「『AIバブル』の落とし穴 ChatGPTリスクとどう向き合う」と題したウェビナーを開催します。日経ビジネス電子版にて「『AI新時代』の落とし穴」を連載中の米シリコンバレーのスタートアップ企業、ロバストインテリジェンスの大柴行人氏を講師に迎えて講演していただきます。
通常の日経ビジネスLIVEは午後7時に開催していますが、今回は6月20日(火)の正午から「日経ビジネス LUNCH LIVE」として、米シリコンバレーからの生配信でお届けします。ウェビナーでは視聴者の皆様からの質問をお受けし、モデレーターも交えて議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。
■テーマ:「AIバブル」の落とし穴 ChatGPTリスクとどう向き合う
■日程:6月20日(火)12:00~13:00(予定)
■講師:大柴 行人氏(ロバストインテリジェンス共同創業者)
■モデレーター:島津 翔(日経BPシリコンバレー支局 記者)
■会場:Zoomを使ったオンラインセミナー(原則ライブ配信)
■主催:日経ビジネス、日経クロステック、日経クロストレンド
■受講料:日経ビジネス電子版の有料会員は無料となります(事前登録制、先着順)。視聴希望でまだ有料会員でない方は、会員登録をした上で、参加をお申し込みください(月額2500円、初月無料)
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