石炭に代わって火力発電の主役を射止めそうだった天然ガスが、ファイナンスをめぐって受難の時を迎えつつある。アジア開発銀行(ADB)が20日に正式決定したエネルギーへの融資方針は、天然ガスにも厳しい条件を並べた。ADBは日本のメガバンクや政府系金融も協調融資で頼っており、その方針は重電・電機メーカーの海外案件も左右する。新たな発電所を2050年以降も稼働させるには、1カ所で約200億円の追加コストになるとの見方もある。

 「これでは厳しすぎて、アジアのエネルギー供給が立ち行かなくなる」。日本の経済産業省幹部はADBが決定する前の原案段階で、天然ガス火力への方針にうなっていた。世界には「もっと再生可能エネルギーに置き換えればいい」との意見もあるが、むしろ再エネを増やすためにもガス火力は必要だ。

 例えば直近のスペインでは1年前より風況が2割ほど弱く、風力発電の減少分をガス火力で補うことになった。液化天然ガス(LNG)の国際スポット価格は10月上旬までの1カ月だけで9割上昇したが、環境先進地域の欧州でさえ、緊急時に頼る燃料なのだと示した。

天候不順で再エネの電力供給が不十分なとき、LNGの需要が高まる(青森県八戸市、写真=PIXTA)
天候不順で再エネの電力供給が不十分なとき、LNGの需要が高まる(青森県八戸市、写真=PIXTA)

 とくにアジアでは、段階的に化石燃料から再エネへ移る「トランジション(移行)」戦略が求められる。水面下で日本政府はADBに対し、現実的に各国が取り得るエネルギー政策を支えるよう要望した。

 そして融資方針の最終版には、いくつか日本側の意向も反映された。例えば以下のような文章が盛り込まれた。「天然ガスは複数の条件下で、石炭火力や石油火力のようなより環境汚染をもたらす燃料に対し、より低炭素の代替手段となり得る。そして柔軟に使いやすい資源なので、より多くの再エネによる電力を系統接続するのに有効だ」

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