米動画配信大手のネットフリックスは2022年11月から日本を含む世界各国で広告付きプランを開始すると発表した。「Disney+(ディズニープラス)」などの競合がひしめき、映像作品への投資が高騰する中、さらなる成長の突破口を開く。視聴者体験の維持、広告による収益モデルの確保という2つの課題に挑む。

 米国で月額6.99ドル、日本は月額790円(税込み)。ネットフリックスは22年11月、低価格の広告付きプランを追加する。従来プラン(米国で9.99~19.99ドル、日本では990~1980円)は据え置きとした。動画の冒頭や再生の途中で、15~30秒の広告を挿入する。1時間に4~5分の広告を表示する。映像の解像度はベーシックプランと同じだが、視聴できないコンテンツも一部出てくる。

 22年1月に料金を値上げしたほか、ディズニープラスなど他社サービスとの競争が激化したことで、ネットフリックスの会員数は22年1~3月期に20万人減、4~6月期に97万人減と2期連続で減少した。競争力の源泉となる映像コンテンツの制作費も高騰している。かつてはユーザー体験を阻害するという理由で拒んできたが、広告付きプランに踏み込まざるを得なかった。

広告付きプランでは動画のダウンロードができない。また、既存のプランで配信している動画のうち、5~10%が視聴できない可能性があるという
広告付きプランでは動画のダウンロードができない。また、既存のプランで配信している動画のうち、5~10%が視聴できない可能性があるという

 22年4月中旬に広告付きプランを公表した際は「1~2年の間に」と説明していたが、準備を前倒して開始にこぎ着けた。22年12月から7.99ドルの広告付きプランを開始すると発表していたディズニープラスに対して1カ月先に展開することになる。1ドル安い価格を提示して、競合の出ばなをくじいた形となる。

 ネットフリックスは、テレビやスマホ画面の操作性、通信速度に合わせて動画をスムーズに再生する技術など快適なユーザー体験を重視してきた。広告配信で、視聴時の快適さが失われたという印象を与えないように、同じ広告を繰り返し表示しないようにする。さらに社内で映像を分析するチームを構成し、シーンの区切りなどにタグを付けることで、自然な形で広告を挿入できるようにする。

 視聴履歴に基づいてその視聴者が好みそうな動画を提示するパーソナライズ化もネットフリックスの特徴の1つ。広告も、原理上は視聴者の属性に合わせた配信が可能となる。過度のターゲティングを繰り返せば、「プライバシーが阻害された」と敬遠される可能性もある。そこで当面は、ロマンスやSFといった映像ジャンル、人気ランキング上位の動画といった形で広告主が出し先を選べるようにするにとどめる。

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