俺の翼の下にラプターがいるよ!
松浦:さあ、本番の話を聞かせてください。
八谷:ショー本番での飛行は7月24日の夕刻19時50分からでした。17時ぐらいから機体をハンガーから引き出して待機しましたが、フライト前の全体ブリーフィングで「時間をきっちり守ること、飛行禁止区域に入らないこと、予定にないことはしないこと」と、これは厳しく言われました。
松浦:余計なショーマンシップを発揮して、予定にない飛行をするパイロットがいるのかもしれませんね。
八谷:これがその時配られたフライトスケージュール表なんですが、ちょっと見てください。もうなんか信じられないですよね。僕らの前が、第2次世界大戦の軍用機のB-17とB-25、2つ後は同じく大戦時のP-51ムスタング戦闘機と、米空軍最新鋭のF-22ラプター戦闘機の同時飛行なんですよ。そんなリストの中に、自分のM-02Jが入っているんですから。で、ずっと待機している間も、自分の横を米陸軍のA-10サンダーボルトII攻撃機が通過したりするんです。もうなんというか別世界です。
一つ心配だったのは、B-17みたいな大きめの飛行機が飛んだ後は、しばらく気流が乱れた状態になるので、それに巻き込まれるのは怖いな、ということでした。これはEAAと話し合って、B-17とB-25が着陸してから自分が離陸する間を10分間とって、気流が落ちついてから飛ぶようにしました。
実際の飛行は動画を見てもらった方が早いかな。
松浦:……うおおおおお、八谷さんすげえ! あっ、下のランウェイにラプターがいるじゃないですかっ(2分30秒あたり)、八谷さん、ラプターの上を飛んだんだ!!
八谷:そうなんです。次の次に飛ぶからラプターが誘導路に出てきたんです。飛んでいる時は「なんか機体が出てるな」くらいだったんですが、後で動画を再生して見つけました。「うはは、最新鋭戦闘機の上を飛んでるぜw」って感じでうれしかったです。
まあ、ラプターとM-02Jは比較することすらできないぐらい違う機体ですけど。こんなに違う機体が同じ空間にいるってのがこのエアショーの醍醐味ですよね。
松浦:夕日がきれいですねえ。
八谷:それと、1000機を超える飛行機が映ってますよね。これで、オシコシ・エアショーの規模が分かるんじゃないかな。その飛行機に乗ってきた人を含めて、ここには、数万人の人がいて、僕の飛行を見ていたんですよ。
最初に、1999年に日本のGEN-E4がデモ飛行をしたと言いましたけれど、飛んだのはメインの滑走路ではなくて、ウルトラライトプレーンが使う一角だったんです。オリジナルの自作機でメインの滑走路を使ってデモフライトしたのは、日本では自分が初めてかな。
ぼくの飛行自体は地味なものなんです。飛行時間も5分と短いし、旋回して観客の前をローパスするだけですから。それはもう、ラプターがエンジンの出力に物言わせてものすごい運動性能を発揮してぐるぐる飛び回るのと比べると、ずっとしょぼいです。
でも、降りてきたら、みんなが立ち上がってがわっと拍手してくれました。こんなたくさんの人からスタンディング・オベーションを受けたのは生まれて初めてなんで。「やったぜ!」と幸せな気分になりました。
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