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 「風の谷のナウシカ」のメーヴェがオシコシの空を飛んだ――。

 メディア・アーティストの八谷和彦さんが2003年以来続けてきたパフォーマンス・アート作品「OpenSky」。アニメーション映画「風の谷のナウシカ」(宮崎駿監督:1984年)に登場する航空機「メーヴェ」そっくりの実機を開発し、空を飛ぶ、というものだ。

 その機体「M-02J」は国内での飛行を重ねてきたが、この7月、米国ウィスコンシン州オシコシのウィットマン空港で開催される、世界的な自作航空機の祭典「EAA AirVenture Oshkosh 2019」(オシコシ・エアショー:主催は実験航空機連盟:Experimental Aircraft Association:EAA )で、ついに飛行展示を実施した。

 アニメ映画から飛び出した日本製の機体が、本場米国の空を飛ぶ。
 観客の反応は、そして、八谷さんが、OpenSkyが、それぞれ得たものは。

 出発前インタビュー(その1その2)に続く「行ってきたよオシコシ」、インタビュー第2弾です。

オシコシ・エアショーの空をM-02Jで飛ぶ八谷和彦さん。

松浦:ついにやりましたね! ……まるで大相撲優勝力士インタビューですけれど。

八谷:ごっつぁんです……ではなくて、ほんとありがとうございます。とても満足しています。

 と同時に、行ったことでこれからやるべきことも見えたので、心から行って良かったなと思っています。準備も金策も大変だったんですけど、幸いクラウドファンディングも順調に集まってなんとか大きな赤字を出さずに済みました。もう支援していただいた方には感謝しかないです。

松浦:さっそくですが、実際に行って飛んでみた経緯を話してもらえますか。

八谷:その前に一つ。僕、前回のインタビューでは、今まで「オシコシ・エアショーでは日本の機体が飛んだことがない」って言っちゃったんですけれど、訂正させてください。1999年のショーで日本のゲン・コーポレーションが開発した一人乗り超小型ヘリコプター「GEN-H4」が参加して、展示飛行をしていました。それと同じ1999年に、在米パイロットで、日本で零戦を飛ばした柳田一昭さんが、富士重工業(現SUBARU)製の「FA-200エアロスバル」で日本からアメリカまで自分で飛んで、オシコシの会場にフライ・インして、エアロスバルを展示しています。だから僕のM-02Jは20年ぶりの日本製の機体ということになります。

 この間、20年も空いちゃったということが、日本の抱えるいろいろな問題点を象徴しているな、と思うんですけれど、それは後回しにしてまずは今回の話をしましょう。

GEN-H4の飛行(YouTubeより)。

あわや、「地上展示のみ」の事態に

八谷:まずオシコシに入ってからの最初の山は、テスト飛行でした。ショーでの展示の算段は付けてあったけれど、ショーで飛行できるかどうかは、主催者であるEAA側がテスト飛行を見てから、ということになっていたからです。

松浦:いつテスト飛行を行ったんですか。

八谷:本番のちょうど1週間前の7月17日です。時刻は19時30分から(現地では夕暮れ)と、だいたい本番と同じ時間でした。場所は会場となるウィットマン空港です。飛行時の太陽高度とか、風の状況とかも本番と合わせて、本当に飛べるかどうかが試されたわけですね。テスト時間は15分。この間は滑走路からの離着陸を全部止めて、我々だけが空港を利用できる体制を作ってくれました。

松浦:それはすごい!

八谷:ところが当日のオシコシは昼から大雨で。我々はハンガー(格納庫のこと)でずっと待機してたんです。