自民党総裁選の論点、4回目は「日本の財政政策」。財政学が専門の土居丈朗・慶応義塾大学経済学部教授に4人の候補者の印象と、日本が直面する財政問題について話を聞いた。今後の財政政策について、土居氏は、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化の目標設定の適正化を図った上で「今こそ、経済成長と歳出削減を両立させるべきだ」と語る。

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自民党総裁選の候補者の率直な印象は?

土居丈朗・慶応義塾大学経済学部教授(以下、土居氏):河野太郎氏は、デフレ脱却に向けて経済対策に力を入れるというよりは、ややニュートラルな立場に見える。労働分配率を一定以上にした企業に減税をする案は支持できる。年金改革にも期待したい。

<span class="fontBold">土居丈朗(どい・たけろう)氏</span><br>1970年奈良県生まれ。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。慶応義塾大学経済学部助教授などを経て、2009年から現職。専門は財政、公共経済学など。政府の行政改革推進会議議員、政府税制調査会委員などを歴任。
土居丈朗(どい・たけろう)氏
1970年奈良県生まれ。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。慶応義塾大学経済学部助教授などを経て、2009年から現職。専門は財政、公共経済学など。政府の行政改革推進会議議員、政府税制調査会委員などを歴任。

 岸田文雄氏は、脱・アベノミクス姿勢を鮮明にしており、「新自由主義的政策の転換」と言っているが、話がやや抽象的で、レトリック先行のイメージだ。もともと経済通だが、本来の色が出ていない。賃上げ支援などを通じ、再分配を強化する考えは評価している。

 高市早苗氏は、本人は否定するが、アベノミクスの継承だ。物価安定目標のインフレ率2%を達成するまで国と地方のPB健全化の凍結を主張しているが、反緊縮財政派の多い保守系議員に配慮しているのだろう。

 野田聖子氏は、議員定数の抜本的な削減や女性活躍政策、少子化対策などに力を入れるとしているが、これまで菅義偉政権が行ってきた政策の焼き直しをしているようなもので、目新しさを感じない。

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 総合的には河野氏と岸田氏を評価している。各候補は、年金、医療、介護などの社会保障改革についてもっと考えを述べてほしい。総裁選直前、田村憲久・厚生労働相が国民年金の将来的な目減りを緩和するために厚生年金と合わせた「公的年金制度改革に着手する」と言及しており、各候補がそれについてどう思っているのかを知りたいし、議論すべきだ。

歳出削減で25年PB黒字化は可能

新政権の財政政策への期待は?

土居氏:PB黒字化は進めるべきだが、重要なのは、高くも低くもないPB健全化への目標設定だ。黒字化のスケジュールを安易に後ろ倒ししてもダメだし、簡単に前倒ししてもいけない。朝令暮改のものをつくってはいけない。

 7月に内閣府が公表した試算では、2025年度に2.9兆円のPB赤字(対GDPで0.5%の赤字)となった。20年代の名目経済成長率を3.5%前後と仮定すると、PB黒字化は27年度に達成される計算になる。例えば、22年度から毎年1兆円規模の歳出削減を行っていけば、骨太の方針2021に示した「25年度PB黒字化」は達成可能だ。

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