自民党総裁選の論点、3回目は「エネルギー問題」について。電力政策と企業経営について分析し続けてきた、国際大学大学院の橘川武郎教授に率直な意見を聞いた。4人の候補者のうち、政策を揺さぶるインパクトがあるのは核燃料サイクルの見直しを掲げる河野太郎規制改革相のみという。原子力容認に傾いたかに見えて「本質は妥協していない」とみる。再生可能エネルギーを拡大する具体策には「見直すべき点も多い」としつつ、2030年に向けてより大胆な策も必要という。
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エネルギーや脱炭素の政策で、総裁選候補のスタンスについて気になる点はありますか。
橘川武郎・国際大学教授(以下、橘川氏):エネルギー政策に影響を及ぼすのは河野規制改革相だけだと思う。他の3人はどなたも現状と大きくは変わらないだろう。河野さんの主張には2つポイントがある。
1つ目は原子力発電だが、私はやや一般的な論調とは異なって、日本の電源構成に占める原発比率を河野さんは変えないと思う。第6次エネルギー基本計画の素案では原発が20~22%となっており、もし河野総裁・首相になって正式決定するときもこのままいくだろう。総裁選に勝つためにも、その後の挙党体制で衆院選に臨むためにも柔軟な姿勢になるとみている。

1951年和歌山県生まれ。現在は国際大学大学院国際経営学研究科教授、東京大学名誉教授、一橋大学名誉教授。経営史学会会長や経済産業省・資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会委員などを歴任。エネルギー問題や電力業界の構造に精通し、歯にきぬ着せぬ論客として知られる。著書に『エネルギー・シフト』『災後日本の電力業』など。
現実路線への軌道修正が続くということですか。
橘川氏:それは違う。実際の深層の部分では、妥協していないとみている。安全性の確認できた原発の再稼働容認は表層的で、その表明によって河野さんのフラストレーションが向かう先は(使用済み核燃料を再処理して活用する)核燃料サイクルだ。
青森県六ヶ所村の再処理工場に焦点が当たるだろう。私は河野さんと何度かお話ししたこともあるが、あの方は本質的には反原発ではないと思う。実際には「反サイクル」の人だ。これまで政府による使用済み核燃料の対策はサイクル一本やりだが、すぐにでもサイクルと(地下に埋める)直接処分との2本立てに変えるのではないか。
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