菅義偉首相・自民党総裁の任期満了に伴う総裁選挙が9月17日、告示された。岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、河野太郎行政改革担当相に加え、16日に野田聖子幹事長代行が立候補を表明し、4氏が争う形となる。これから29日の投開票に向けて本格的な論戦がスタートするが、各候補が重視する政策や争点はどこにあるのか。エコノミストや識者に聞く連載を5回にわたって掲載する。

 初回は、ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストが、喫緊の課題であり、国民の関心も高い新型コロナウイルス対策に関して分析する。感染力の強いデルタ型が広がり、陽性者数が急速に増加した7月中旬から8月にかけての「第5波」はピークアウトの兆しを見せている。だが冬場には感染再拡大による「第6波」の恐れも指摘されているだけに、将来の首相となる次期総裁には強いリーダーシップが求められよう。だが矢嶋氏は「各候補のコロナ対策は似たようなもの」と手厳しい。その理由を見ていこう。

総裁選候補者が掲げたコロナ対策をどう見ますか。

矢嶋康次・ニッセイ基礎研チーフエコノミスト(以下矢嶋氏):この1年半、新型コロナウイルスの感染拡大は日本に様々な課題を突き付けた。まず、リモートワークに切り替えられないなど、柔軟な働き方に対応した社会の仕組みができていなかった。いまだに書類やハンコがないと手続きが進まない、デジタル化の遅れも露呈した。人口当たりの病床数が世界一であるにもかかわらず、医療体制が脆弱であることも分かった。そして、有事の際に国家はどこまで私権を制限できるか、いわゆる「公と私」の問題にも正面から議論してこなかったツケが回ってきた。

<span class="fontBold">矢嶋康次(やじま・やすひで)氏</span><br />1968年生まれ。92年東京工業大学無機材料工学科卒業、日本生命保険相互会社入社。95年からニッセイ基礎研究所研究員。2008年主任研究員、12年より現職。
矢嶋康次(やじま・やすひで)氏
1968年生まれ。92年東京工業大学無機材料工学科卒業、日本生命保険相互会社入社。95年からニッセイ基礎研究所研究員。2008年主任研究員、12年より現職。

 つまり、従前から抱えていた様々な問題が噴出したわけだ。これらの課題に向き合い、解決していくことは、コロナ対策でもあり、さらには社会改革、ひいては成長戦略にもつながる。従って、候補者がコロナの問題を通じて考えていることは、自身のビジョンとリンクしていなければならない。

 だが、17日時点で各候補が言及しているコロナ対策は、突出したものがなくてどれも似たようなものだ。医療難民をなくす、ロックダウン法整備の準備、ワクチンパスポートを活用した経済活動との両立……。国民の関心事が一番高いトピックであるにもかかわらず、抜きんでた具体策に言及していないのは残念なことだ。

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