事実上の次期首相が決まる自民党総裁選をテーマにした連続インタビュー。前回の混戦の自民党総裁選、具体論乏しきコロナ対策「第6波」に備えをに続く第2回は、日銀の審議委員として政策当局の立場も経験したことのある、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストに聞く。

現時点での候補者の政策を、経済政策の観点からどう評価しますか。

野村総合研究所・木内登英エグゼクティブ・エコノミスト(以下、木内氏):まず前提として、各候補者共に政策をかなり広範囲にわたって打ち出している。当面は自民党として衆院選に勝つことが重要で、現時点で掲げる政策は短期的な戦略の色彩が強い。衆院選後、あるいは参院選後にどうするのかを見てみないと、本当のところは分からない、という点には留意しておくべきだろう。

 その上で全体感としては、財政拡大・金融緩和強化というアベノミクスの色が薄まる方向にあると言えそうだ。

 これまでの発言や公表内容では、野田聖子氏が最も強く財政政策の正常化を宣言しているし、河野太郎氏もその傾向がより強い。岸田文雄氏も財政健全化の方針を表明している。私はアベノミクスについて、3本の矢のうち金融・財政政策に偏ったことが問題だったとみている。これが薄まることは好ましい。特に金融政策については、河野氏が政策の正常化を容認する姿勢を見せているほか、野田氏も正常化を明確にしている点で好ましい。

<span class="fontBold">木内登英(きうち・たかひで)</span><br />野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト。<br />1987年に野村総合研究所入社。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年に野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍。07年に経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年、日本銀行審議委員に就任。17年7月から現職。
木内登英(きうち・たかひで)
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト。
1987年に野村総合研究所入社。1990年に野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年に野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年に野村證券に転籍。07年に経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年、日本銀行審議委員に就任。17年7月から現職。

 今の日本経済にとって、一番重要なのは、生産性を高めることだ。金融政策や財政政策で一時的に需要を膨らませるだけではいけない。この点で河野氏は、デジタルやグリーンをイノベーションの核として日本の稼ぐ力を伸ばすことや、イノベーションを担う人材と資金の好循環をつくること、全国でテレワークできる5Gネットワークの構築、省庁の地方移転と東京一極集中是正を通じた地方経済活性化を挙げる。これらは、構造改革的な政策で、生産性の向上につながりうる。

 一方、岸田氏は規制緩和や構造改革について、新自由主義的政策で格差の拡大を生んだとし、分配政策を通じた格差縮小を重視する方針を掲げる。

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