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(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

9月14日、安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が行われ、菅義偉官房長官が新総裁に選出された。「アベノミクス」の継承を掲げる菅氏の前には、新型コロナウイルスの感染拡大で悪化した景気をどう回復させるか、遠のく財政再建への道筋をどうつけるかなど、数々の課題が立ちはだかる。16日に発足する新政権が取り組むべき経済政策について、著名エコノミストに聞くシリーズの第2回は矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所矢嶋康次チーフエコノミストと山田久・日本総合研究所副理事長に登場してもらった。(第1回を読む)

「目に見える負担減」で国民の支持つかむ
矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所矢嶋康次チーフエコノミスト

まもなく菅政権が発足しますが、どのように見ていますか。

矢嶋康次(やじま・やすひで)氏
1968年生まれ。92年東京工業大学無機材料工学科卒業、日本生命保険相互会社入社。95年からニッセイ基礎研究所研究員。08年主任研究員、12年より現職。

矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト(以下、矢嶋氏):まず前提として、菅政権はコロナ対策や経済立て直しなど、すべての政策が選挙日程とのにらみ合いになると思います。来年10月に任期満了を迎える衆議院は早期解散・総選挙の可能性がくすぶりつづけています。21年7月には東京都議会選挙も控えている。それだけに、思い切った痛みを伴う政策はまず打てないでしょう。新型コロナも収束していませんので、当面は安倍政権のやり方を踏襲し、追加の財政出動が続く状態になると思います。 

菅氏はいかにして安倍政権とは異なる「色」を出していくのでしょうか。

矢嶋氏:一方で、菅氏は安倍政権の時の経験から、政権発足当初のスタートダッシュが重要であることをよく知っています。安倍政権が金融政策でサプライズを起こしたように、自分も何か大きな目玉政策を掲げたいと考えていると思います。ですが、金融政策に関してはもはや追加策を講ずる余地がほとんどありません。

 ですので私の予想では、菅氏は家計に対し「目に見える負担減」を掲げることで、支持を得ようとする戦略に出るだろうと考えます。携帯電話料金の値下げに言及したことが一番良い例です。菅氏は以前より、携帯大手3社の利益率が依然高止まりにある点を問題視し、料金の値下げ圧力をかけつづけています。世帯消費支出に占める電話通信料の割合は4%超と年々高くなっており、一定の割合を占めています。ここにメスを入れることで、世論の支持を得たいと考えていると思います。

 追加の給付金支給の可能性も十分あり得るでしょう。所得増加は家計にとって非常にわかりやすい「アメ」です。総裁選の討論会でも、「(追加の給付金が)必要であればしっかり対応していく」と語っていました。

デジタル庁の創設などにも言及しています。