安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が行われ、菅義偉官房長官が新総裁に選出された。「アベノミクス」の継承を掲げる菅氏の前には、新型コロナウイルスの感染拡大で悪化した景気をどう回復させるか、遠のく財政再建への道筋をどうつけるかなど、数々の課題が立ちはだかる。16日に発足する新政権が取り組むべき経済政策について、長谷川克之・みずほ総合研究所チーフエコノミスト、藤代宏一・第一生命経済研究所主任エコノミストに聞いた。

「デジタル庁」の推進に期待、地銀再編は後押し必要
長谷川克之・みずほ総合研究所チーフエコノミスト

菅義偉・自民党新総裁に期待する経済政策は何でしょうか。

長谷川克之・みずほ総合研究所チーフエコノミスト(以下、長谷川氏):日本経済は、生産性向上など課題が山積です。菅新総裁が前向きに検討している「デジタル庁」の推進に期待しています。日本経済の再興に一層のデジタル戦略は欠かせませんが、決してたやすいものではありません。

<span class="fontBold">長谷川克之(はせがわ・かつゆき)氏</span><br> 1988年上智大学法学部卒、97年ロンドン大学経営大学院(LBS)修了。88年日本興業銀行、国際金融調査部、ロンドン支店、調査部などを経て2002年からみずほ総合研究所。19年からチーフエコノミスト。
長谷川克之(はせがわ・かつゆき)氏
1988年上智大学法学部卒、97年ロンドン大学経営大学院(LBS)修了。88年日本興業銀行、国際金融調査部、ロンドン支店、調査部などを経て2002年からみずほ総合研究所。19年からチーフエコノミスト。

 掛け声に終わらせるのではなく、既存の企業の業務内容、フロー、組織構造、ルールなどを全面的に見直す「ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)」を官民挙げて、徹底的に取り組んでほしいです。器をつくるだけではだめです。デジタル化を一丁目一番地に挙げている菅新総裁のリーダーシップに期待しています。

 地方創生もさらに進めていくべきです。新型コロナを契機に、災害や感染症被害へのリスクの観点から、経済の東京一極集中に一定の危険があることも分かりました。国として、企業として、もっと事業継続性を高める必要があります。ですから、単に地方創生ということではなく、リスク管理の観点から今後は地方分権を進めるべきだと思います。

 新型コロナ禍でリモートワークなど働き方が変容しているので、本社を地方に移転させる動きをもっと促してほしい。例えば、大阪、福岡などを「スーパースマートシティ」にして、地方の中核都市でのビジネスの活性化につなげるのも1つの手です。

「エネルギー基本計画」見直しは待ったなし

菅氏は総裁選の過程で、地方銀行について「数が多すぎる」と発言し、再編を進めるべきだとの考えを示していました。

長谷川氏:確かに地方の金融機関が多すぎるという側面はあります。それは否定できません。しかし、欧州と比べると、決して多すぎるというわけではありません。グローバルで見れば、決して多いとはいえないのです。

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